りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ソーラー

ソーラー (新潮クレスト・ブックス)

ソーラー (新潮クレスト・ブックス)

★★★★

マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界―。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。

モラルがなくてどこまでもエゴイストで好色なノーベル賞科学者。
サイテー男なのに憎めないのはなんでなんだ?
まるで自分を見ているよう?と思わせてしまうのがマキューアンのすごいところ。

ちょっとも自分の欲望に勝てなくて、醜聞にまみれて、でもなんとなく許されて、また同じことを繰り返す。
絶対そのツケがまわってくるよと分かっているのに、嫌なことは先送りしたり、見たくないものは見ないことにしたり、根拠はないのに「だいじょうぶ」と無理矢理思おうとしたり。
それは生きていく上で必要な能力ではあるのだけれど、でももしかすると取り返しがつかなくなるかもしれない…。

笑いながら読んでいて、ちょっとぞっとして、その笑顔が凍りつくような…。 そんな作品。
やっぱりマキューアンは意地が悪い。