りつこの読書と落語メモ

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すべての終わりの始まり

すべての終わりの始まり (短篇小説の快楽)

すべての終わりの始まり (短篇小説の快楽)

★★★★★

“あなた”の家に潜み静かな生活を揺さぶる“私”、謎の生き物に出会う姉妹、エイリアンに協力を求められるバツイチの女、空飛ぶスーパーおばあちゃん―浮遊感漂う繊細な文章と奇天烈な発想がもたらす衝撃力あふれる19の物語。唯一無二の奇想作家エムシュウィラー、本邦初の作品集。

3年ぐらい前からほぼ日手帳を使っていて、それに付いてきたうすーいメモ帳に読みたい本をメモしている。で、この本はそのメモ帳のかなり前の方のページに書いてあって、いつか読もういつか読もう思いながら、メモは増える一方だし(小さい字でぎっしり書いて今2冊目)、新刊は図書館でも人気があるから早めに予約を入れておくクセがついていて、そうすると前の方に書いてある本はどんどん後回しになっていき…。
で、「前の方にメモしている本を潰していこう」と思いたって読んでみたんだけど。

好き好き、これ好きかなり好き。
ジャンルはSFになるんだろうけど、SFSFしたSFじゃなくて、淡々とした日常の中にエイリアンが出てきたり、異常な状況の中でそれを淡々と受け止めてフツウに暮らしていたり…。このバランスがものすごーく好みだ。

1作目の「私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない」でハートをぎゅっと鷲づかみされる。
一人暮らしの女性(それもおそらく妙齢の)の家にいつからか住んでいる「私」。でもその存在に「あなた」は気付いていない。「私」は「あなた」に気付いてほしいのか、わざと自分の痕跡を残す。「あなた」はその存在に気付き始めているんだけれど、気付かないふりをして、どうにかこうにかやり過ごそうとするのだが…。
「私」がいったいなんなのか。
エイリアンなのかお化けなのか小人なのか最後までわからない。
でもこの2人の感情が妙にリアルで「こういうことってあるよな」っていう気持ちにさせられる。

エイリアンと友好的な関係を築こうとする女性(これも妙齢の…)を描いた「すべての終わりの始まり」もすごくいい。
なんかすごい事態なんだけど、やろうとしていることがすごくバカバカしくて、なんだか笑えるのだ。

1作目が日常の中に潜む異常なら、2作目は異常の中で淡々と続いていく日常。
収められた短編の中には「育ての母」「ボーイズ」「男性倶楽部への報告」のように、ちょっとフェミニズムのかほりのするものもあるんだけど、それも最後は圧倒的なユーモアで笑い飛ばすようなところがあって、そこがまた好き。

裏表紙にはいかにも面白がり屋っぽいおばあさんの写真。
素敵な人だなぁ。もっと他の作品も翻訳されるといいなぁ。