りつこの読書と落語メモ

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ラットマン

ラットマン

ラットマン

★★★★

これで3冊目の道尾秀介
今まで読んだ2冊に比べると、なんか地味っていうか、あれ?こういう小説も書くんだ?みたいな驚きがあった。あ、いや悪い意味じゃなく。
今まではどちらかというと、多少物語に無理があっても人物がいびつでも、とにかくあっと言わせられればいい!人物を描くよりまずは仕掛け!みたいな印象があったんだけど、これはそうじゃなかった。今までの作品も実はこういうところを目指していたのかな、とも思ったんだな。

結成十四年のアマチュアロックバンド。緩やかに、けれど確実に軋みはじめる人間関係。練習中のスタジオで起こった変死事件。姉と父を亡くした、幼いころの記憶。守りたかったのは誰だ。憎んでいたのは誰だ。過ちとは何だ。罪と罰をめぐる、道尾秀介の最高傑作。

人間が何かを知覚する過程で前後の刺激が知覚の結果を変化させてしまう現象を「文脈効果」と言うらしい。
同じねずみの絵でも、動物と並んでいればねずみに見え、人間の顔と並んでいれば人間の顔に見える。それが「ラットマン」なのである。
このタイトルが最後まで読むとなるほど〜ときいてくる。

最初に「地味」と書いたけれどなかなか面白かった。今まで読んだ3作品の中では一番好きだ。
以下ネタバレ。







読者も、前後の状況や登場人物の言動から、「おそらくこういうことがあったのだろうな」と想像させられる。
いやもしかするとこう思わせておいて実はこうなのかもしれない、と考えているのだが、最後まで読むと、またしても作者にしてやられたのがわかるのだ。
主軸の物語があって、さらに主人公の暗い過去があって、それが実は両方とも…というところに、この小説の面白さがある。