ドクター・ラット
- 作者: ウィリアム・コッツウィンクル,内田昌之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/03/16
- メディア: 単行本
- クリック: 47回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
地球上のあらゆる生物が反乱をおこし、実験室で飼われていた一匹の気のふれたネズミだけが人間の味方になる。すべてが動物の一人称で語られる、残酷で鮮烈な寓話。世界幻想文学大賞受賞。
いやぁ。劇薬注意。
志〇動物園を毎週「かわいーかわいー」とみている人は、決して読んではイケマセン。
物語の語り手は、実験室で飼われて去勢され臓器を抜かれ残酷な実験の結果、すっかり気がふれてしまった一匹のマウス、ドクターラット。ドクターラットは残酷な実験を繰り返す博士たちを礼賛し、死んでいく動物たちに「死こそ解放なり!」と声をかける。
虐待といっても過言ではないほどの動物実験、食肉の場面がこれでもかこれでもかと容赦なく繰り広げられる。
一方、野生の呼び声に導かれて、集結する町の動物たち。犬、鳥、象、オオカミ、鷲…。
物語はある終結に向かって加速をつけて進んでいく。
動物たちは自由を取り戻せるのか?人間たちはどうなるのか?
ドクターラットの軽妙な語り口でなければ多分読み終えることはできなかっただろう…。
しかし物語が発狂したマウスによって語られているというところがこれまたミソなわけで。最後まで読むと、狂ったマウスと実験を繰り返す人間の境界がわからなくなる。
どこからどこまでもブラックな物語だった。嘆息…。