りつこの読書と落語メモ

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アスタの日記

アスタの日記〈上〉 (扶桑社ミステリー)

アスタの日記〈上〉 (扶桑社ミステリー)

アスタの日記〈下〉 (扶桑社ミステリー)

アスタの日記〈下〉 (扶桑社ミステリー)

★★★★★

うがーっ。面白かった。今まで読んだヴァインの小説の中でもピカイチに面白かった。ああ…。なんて素晴らしい。こんなに面白い小説を読んでしまったら、明日から私は何を読んだらいいんだろう。そんな風に思ってしまうぐらい、面白かった。

1905年から始まる、アスタの残した膨大な日記―それはデンマークからイギリスに移住してきた彼女が、24歳の時から数十年にわたって書き記したものだ。死後、日記は娘のスワニーによって順次翻訳刊行され、ベストセラーとなった。そしてスワニーも世を去ると、姪のアンが祖母の日記をはじめすべてを受け継ぐことに。そんなアンにかつての友人でテレビ・プロデューサーのケアリーが連絡を取ってきた。遠い過去に起こったある未解決の殺人事件に関連したことが、日記の原本に書かれているのではないかというのだが…。

アスタというデンマークからイギリスの移住してきた24歳の女性がいる。夫ラスムスは家庭を顧みず彼女をロンドンに残して、事業を立ち上げるのだと言ってどこかに行ってしまった。残された彼女は、言葉も通じない国で、幼い息子を2人抱えてしかも身重だ。友達もいない彼女はデンマーク語で日記を書きはじめる。誰にも読まれないことを前提にしたこの日記は60年間以上に渡って書き続けられ、のちに彼女の娘スワニーによって刊行されベストセラーになる。
この日記が小説の中で「資料」として随時抜粋されながら、アスタの孫であるアンが語り手となって、アスタの長女として溺愛されながらも実は彼女の本当の子どもではないと老年になってから知らされたスワニーの出生の秘密と迷宮入りの殺人事件の解明を主軸に、物語は進んでいく。

時に辛辣で残酷だけど愛情豊かで直情的で単純明快なゆえに謎も多い…アスタの魅力的なことといったら!アスタだけじゃなく、スワニーもアンもハンシーヌも…最初は「こりゃ大丈夫か?」と思ったラスムスさえも、生き生きと描かれているのでまるで目の前にいるような感じがしてくる。
刺激的な事件があるわけでもなければ、あっと驚くトリックがあるわけでもない。だけど目が離せないほど刺激的で面白い。人の善意と悪意、優しさと冷酷さ、愛情と憎悪、書くこと(書かれること)によってもたらされる幸福と不幸、それらが本当に見事に融合されてものすごく説得力があって無理がなくて…いやもう絶妙としか言いようがない。一番のミステリーは人間の行動と心理なのだなと気付かされる。いやほんとにヴァインってすげー…。ラブ。