りつこの読書と落語メモ

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コレクションズ

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うあーーっ。すごく良かった!すごく好きだった!いつも星1つから5つで付けているんだけど、星5つのあとに「!!!」をつけたいぐらい好き。こんなにたくさん笑ってたくさん泣いた小説は久しぶりかもしれない。何しろ長いし醜悪でブラックなところも目につくから、好き嫌いが分かれる作品だと思うが、私は好きだ。大好きだ。こういう小説に出会いたくて読書をしていると言っても過言ではない。
図書館に取りに行ってまず本の厚さ&重量に度肝を抜かれる。なんじゃこりゃー。こここれを持って通勤するんですか、私は?(通勤時間とランチタイムは貴重な読書タイムなのだ)いやしかし重い思いをして持ち歩く価値は十分あった。アマゾンのレビューを読むと「無駄に長い」というようなことを書いている人がいたけれど私はそうは思わなかったな。意味のある長さだったと思うし意味のある重さだったと思うよ。

家族の物語が好きだ。アン・タイラーもそうだしジョン・アーヴィングもそうだけれど、家族の物語にはいつもひきつけられる。フツウの家族ってなんだろう?家族の幸せってなんだろう?家族ってなんだろう?それは私の永遠のテーマでもある。答えを求めるように家族の物語を探して読む。答えは見つからないけれど、フツウの家族なんてものはないのかもしれない、家族であるということだけが一番重要なのことなのかもしれない、と思い始めている。これも濃厚な家族の物語だ。

妻として母として、セント・ジュードにある家で50年の歳月を過ごしてきたイーニッド・ランバートにとって、山積する不満はなかなか解消されない。介護や医療費のことが不安だし、長男の嫁との関係は悪化するばかりだ。夫のアルフレッドはすでに鉄道会社を退職している元技術者で、パーキンソン病を患って痴呆症が出始めている。
子供たちは子供たちで、わが家を巣立ってから何年も戻ってこないまま。しかも、それぞれの生活は行きづまっていた。長男のゲイリーは地方銀行の部長で経済的には恵まれているが、妻子との関係が不調で鬱々とした日々を送っている。反抗的な次男のチップは大学で先鋭的な文学理論を講じていたが、女子学生と関係を持って辞職に追いやられ、破産寸前の状態。末っ子で一人娘のデニースは新進気鋭のシェフとして活躍しながらも、結婚や恋愛の面で波乱の連続だ。
あらゆる期待を打ち砕かれていくイーニッドに残された望みは、家族の絆を取り戻すために、家族そろってわが家でクリスマスを祝うこと。かくして、家族の絆の修正(コレクションズ)は、最後のクリスマスの日に託されたが―。家族という私的な領域と、現代アメリカが直面している社会的領域とを、さまざまな手法を用いて巧みにリンクさせ、辛辣に、滑稽に、現代人にまつわる悲喜劇を紡ぎだす。全米図書賞に輝くベストセラー小説にして、21世紀初頭のアメリカ文学最大の話題作。

父親アルフレッドは鉄道会社で副部長をやっていたが今は引退している。仕事にはまじめで実直。家で会社公認の実験をして特許を取ったりもしている。寡黙で禁欲的で自分の殻に閉じこもる「扱いにくい」男で、最近になってパーキンソン病認知症の症状が出始めている。
母親イーニッドは楽天的で社交的だが、夫アルフレッドに抑えつけられさまざまな不満を抱えている。子ども3人への要求は果てしなく、1年中クリスマスの心配をしている。
長男ゲイリーは銀行でそこそこ成功していて、父のようにはなりたくないと思いながらも、拝金主義で妻キャロラインとの間もぎくしゃくしている。キャロラインはいまどき流行りの「叱らない(しつけない?)育児」を実践中で上の息子2人とタグを組んで、ゲイリーを「鬱病」となじる。姑イーニッドを毛嫌いしていてもう二度と旦那の実家には足を踏み入れないという決意をしている。
次男チップは大学の助教授をしていたが女学生と関係をもってしまいクビになり破産寸前。妹から借金して芽の出そうにない脚本を書いている。
末っ子デニースは人気レストランの料理長をやっているが、離婚して波乱万丈な恋愛生活を送っている。

そんな彼らの現在と過去がそれぞれの章で(くどくどと?)語られていく。強烈な中流意識、嫉妬や僻みやねたみ、だめになる恋愛、だめになる仕事。親は子どもに期待しすぎ、子どもは親を疎ましく思う。しかしそんな中で確実に親は老いていく。
アルフレッドもイーニッドも3人の子どもたちもみな欠点だらけの面倒くさいタイプの人間だ。アルフレッドの堅苦しさ。イーニッドのやかましさ。読んでいてああ、もううんざりだ、とさえ思う。しかし憎めない。些細なことで傷つき恥じ入り怒り泣き喚き、些細なことで立ち直り喜び心を改める。欠点だらけで時に醜悪な彼らだけど、読んでいると彼らに共感せずにはいられない。愛さずにいられない。彼らは物語の登場人物なのではない。彼らは自分の親であり自分自身でもあるのだ。

物語は悲劇なのだが決して深刻ではなく笑える。ものすごく深刻な場面さえ笑える。
しかし最後の方では泣いてしまう。いやもう私は泣けて泣けてしょうがなかった。ここまでさんざん彼らにうんざりさせられていたからこそ、最後のところが胸にしみて泣けるのだ。だけど笑っちゃう。ほんとにこれはもうすごい作品だと思う。ブラボー。