たんぽぽのお酒
- 作者: レイブラッドベリ,北山克彦
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 1997/08/01
- メディア: 単行本
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輝く夏の陽ざしのなか、12歳の少年ダグラスはそよ風にのって走る。その多感な心にきざまれる数々の不思議な事件と黄金の夢…。夏のはじめに仕込んだタンポポのお酒一壜一壜にこめられた、少年の愛と孤独と夢と成長の物語。「イメージの魔術師」ブラッドベリがおくる少年ファンタジーの永遠の名作。12歳からみんな。
「ものすごくいい」というのは前から聞いていて、いつか読んでみたいと思い続けていた小説。ようやく読めた。
どんな小説なのか知らずに読んだので、最初は「????」「もしかして挫折本になるかも」と思った。
なんでかな。文章がすんなり頭に入ってこないの。表現が独特でさっと理解しづらいような感じがしたんだな。もしかして翻訳のせい?…いやきっとそうじゃなくて、ブラッドベリがそういう表現をする作家なんだろう、多分…。詩のような文章なんだよね。私、結構苦手なんだな、詩とか散文っぽい文章。
しかし読んでいるうちに徐々に物語に引き込まれていった。テニスシューズのエピソードを読んで、「こ、これは!!」と思った。すごいいいぞ。すごーーくいいぞ。すごい小説だぞ。
イリノイ州の小さな町に起こったひと夏の、小さくてちょっと不思議な物語。ダグラスという12歳の少年と弟トムを中心に、彼らの身のまわりで起きた出来事や町の人々に起きた出来事が、おじいちゃんが夏の間に作るたんぽぽのお酒みたいに、一つ一つ瓶に詰められていて、それを開けるとその夏の空気がにおいとともにぱーっとひろがっていく…。
12歳で知る「生」「死」「別れ」「友情」「恐怖」そして終わりと永遠につながっていくもの。
これを一人の大人が書いたのだということに驚いてしまう。この空気やこの感じは確かに自分が子どもの頃に感じていたもので、まさかこうやって一冊の本を読むことで、まざまざと思い出されるとは…。
一つ一つのエピソードがどれもステキなんだけど、特に好きだった話。
- ダグラスの帰りが遅くなって、トムとお母さんが2人で散歩に出る話。
- 幸福マシン
- タイム・マシン(フリーリー大佐と少年たちのエピソードは本当にものすごく美しくてちょっと思い出しても涙が出てくる)
- エルマイラ・ブラウンの話。(いやぁ笑った笑った。声をあげて笑った)
- ライム=バニラ・アイスの話。(なんてステキなラブストーリー)
- 「孤独の人」の話
- 大おばあちゃんの話
- ジョウナスさんの話
ああ、なんだ。ほとんど全部じゃないか…。
そしてこれは夏に読むといい。夏休みが残りあと1週間ぐらいの頃に読むといい。私にはそんなに長い夏休みはないけどね…。