ランチ酒
★★★★
犬森祥子の職業は「見守り屋」だ。営業時間は夜から朝まで。ワケありの客から依頼が入ると、人やペットなど、とにかく頼まれたものを寝ずの番で見守る。そんな祥子の唯一の贅沢は、仕事を終えた後の晩酌ならぬ「ランチ酒」。孤独を抱えて生きる客に思いを馳せ、離れて暮らす娘の幸せを願いながら、つかの間、最高のランチと酒に癒される。すれ違いのステーキとサングリア、怒りのから揚げ丼とハイボール、懐かしのオムライスと日本酒、別れの予感のアジフライと生ビール…今日も昼どき、最高のランチと至福の一杯!心を癒し、胃袋を刺激する絶品小説。
女性版&飲める人向き「孤独のグルメ」のような作品で、これが楽しくないはずがない!
「孤独のグルメ」の方はお仕事はランチの場所を見つけるための移動という位置づけっぽいが(失礼?)、こちらは見守り屋というお仕事と主人公自身の家庭の問題もきちんと語られていてそのバランスがとてもよい。
こんな風にきちんと人と対峙することができて、食べることと飲むことも楽しめる主人公が結婚相手+義父母とうまくいかなかった、というのも…人生簡単ではないよねぇと思う。
個人的には飲み方のほどがよくて尊敬!(あとひき上戸じゃないのよね…)
続編もあるとのことなので楽しみ。
銀河の果ての落とし穴
★★★★★
奇想とリアル、笑いとシュールが紙一重のケレットワールド。ウサギになったパパ、サーカスの人間大砲、戦場に現れるピトモンGOキャラ、脱出ゲーム「銀河の果ての落とし穴」…語りの名手の最新短篇集。
とてもよかった。この方の作品は翻訳されれば必ず読んでいるけれど、独特の浮遊感があってたまらない。
危険と隣り合わせの日常の中ほんの小さな出会いや楽しみに救いを見出す日々。
「ホロコースト」もその人の経験や立場によってとらえ方や感情がさまざまであることを痛感した。
批判、達観、諦観とも違う…どうしようもない世界を生き延びるための希望のようなものを感じる。異常な日常を乗り越えるためのユーモアの切実さが胸を打つし、もはや他人ごとではない。
第七回 柳家さん助の楽屋半帖
~仲入り~
第3427回 黒門亭
11/9(土)、第3427回 黒門亭に行ってきた。
・駒へい「道灌」
・美るく「ふぐ鍋」
・藤兵衛「始末の極意」(さんま火事)
~仲入り~
・小花 太神楽
・甚語楼「抜け雀」
藤兵衛師匠「始末の極意」(さんま火事)
藤兵衛師匠は珍しい話をしてくれるから大好き。
ケチな地主のケチぶりが徹底していて笑ってしまう。
それに意趣返しをしたいだけの町内の連中のたわいなさ。
サゲのバカバカしさも大好き。楽しかった。
小花さん 太神楽
こんなに近くで太神楽を見られるの、めっちゃ楽しい。
それにいつもの寄席ではやらない技をいくつも見られて、これは幸せだー。
間近で見ると太神楽ってすごい運動量なんだなということがわかる。
なんかすごいお得感。
甚語楼師匠「抜け雀」
すごく表情豊かだし、噺のテンポがいいし、メリハリがあって、かっこいいなぁ。
甚語楼師匠の落語を聞くといつも「かっこいい」という言葉が出てしまう。
押しと引きのバランスが絶妙なのだ。
ああ、もっと甚語楼師匠を見たい。という気持ちでいっぱいに。
ケミストリー
ケミストリー
★★★★
ボストンの大学院の研究室で日々実験を重ねるも得意だったはずの化学の研究はうまくいかず、博士号取得はドロップアウト寸前。同棲中の彼からのプロポーズにも答えが出せず…。血のにじむ努力で中国から移民してきた両親の期待に応えられない自分を持てあます、リケジョのこじれた思いが行きつく先は―。ユニークな語り、削ぎ落とされた文章から滲みだすあたたかさが胸を打つ、愛と家族と人生のものがたり。中国系アメリカ人作家のデビュー作。PEN/ヘミングウェイ賞受賞
血のにじむような努力をして中国からアメリカへ移民してきた両親のもとに育ち、がり勉と陰口を叩かれながらも博士課程まで進んだ女性。
同じ研究室の先輩と同棲しプロポーズを受けながらも結婚に明るい未来を抱けずイエスと返事をすることができない。
研究も行き詰まりドロップアウト。そのことを両親に告げることもできない。
両親が不仲で自分への期待の大きさや目に見えた愛情表現を受けずに育ったことによる気難しさはあるものの、彼女自身は親のことをちゃんと分かっていて赦しているのが救いだった。
前半は、うだうだ小説?とイライラしたけど、徐々にこの主人公が好きになってきた。
それにしても新潮クレストでこういう作品は珍しいような気がする。
11月上席「落語協会真打昇進襲名披露」
11/8(金)、国立演芸場で行われた11月上席夜の部「落語協会真打昇進襲名披露」に行ってきた。
・市若「牛ほめ」
・わん丈「来場御礼」
・扇辰「道灌」
・ペペ桜井 ギター漫談
・権之助「湯屋番」
・ぎん志「町内の若い衆」
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(扇辰、権之助、ぎん志、小志ん、わさび)
・にゃん子・金魚 漫才
・わさび「券売機女房」
・仙三郎社中 太神楽
・小志ん「芝浜」
わん丈さん「来場御礼」
いつもの高校時代に金髪にした話でどっかん!とウケて気を良くして(笑)、地元の会が増えるといかに東京のお客様が落語会に慣れているのがわかる、とわん丈さん。
自分の会を地元でやると、携帯は鳴るわ袋のガサガサいう音はするわ…まぁ落ち着かない。
しかも犯人は誰だ?と客席をチェックして、それが自分のおかんだった時の気持ちと言ったら。
家に帰ってきてから母親にダメ出し。
しかし母親も負けてない。
「落語の最中に携帯ならしたやろ!なんで電源を切らんのよ」
「いやだって…携帯の電源切るって結構な勇気が必要なんや」
「でも落語の最中に着信音が鳴ったら噺が台無しになる!」
「あれは着信じゃなくてアラームやで!」
「そんなのどっちでもええわ。しかもすぐに切らないしもう一度ならしたやろ!」
「それはスヌーズ!」
…強烈だけど息子がかわいくてしょうがないお母さんの姿が浮かんできて、すごく笑えるしほのぼのもする。
わん丈さん、すごいなぁー。お客さんを引き付ける力がとても二ツ目とは思えない。
そして「人たらし」のかほりもぷんぷん(笑)。
ぎん志師匠「町内の若い衆」
ぎん志師匠、左吉時代に2回見ているけど特にそれほど強い印象は持ってなかった。
でもこの日の「町内の若い衆」はなんか好きだったな。なんだろう。わざとらしさが全然なくてふわっと面白い。思わず引き込まれてわはは!と笑ってしまった。
途中でセリフが抜けたりもして、あれ?なんか緊張してる?
仲入りに入った時に、ぎん志師匠をよく見てる友だちが「がたがたじゃねぇか!」と言ったのもおかしくておかしくて。
「あ、やっぱり?緊張症?でもなんかすごく好みだったよ」と言うと「でしょう!いいんだよ、この人すごく!」。
楽しかった~。
真打昇進襲名披露口上(扇辰師匠:司会、権之助師匠、ぎん志師匠、小志ん師匠、わさび師匠)
新真打の楽屋入りが遅かったと扇辰師匠はご立腹(笑)。特にわさび師匠は、扇辰師匠が出番に上がるときにもまだ来てなかった、と。
この4人のこと私はそんなに知らないんだよ、と言いながらも、これからも末永く応援してやってくださいと挨拶。
それから、それぞれが自分の隣に座った師匠の好きなところ、嫌いなところを言う、という流れに。
ところがこれ、打ち合わせと逆の流れだったらしく、全員がぶっつけ本番で相手について言わなければならなくなってしまった様子。
で、一番端のわさび師匠は権之助師匠のことを言わなければいけなかったのに「扇辰師匠の好きなところは…」とわざと間違えたのがすごくおかしかった。さすが機転が利くね!
わさび師匠「券売機女房」
小さな中華屋に常連客が入ってきて「あー俺いつものやつね」とラーメン、餃子、ビールの小瓶を注文。
それを食べながら店主とあれこれ話をしていると、そこにアメリカ人のお客さん。メニューもよくわからないし注文の仕方もわからない。
その後に入って来たのが声の小さい内気な青年。彼も勇気をだして注文を言ってるのに店主が耳が遠くて聞き取ってくれないことに心折れて出て行ってしまう。
「この店も券売機入れた方がいいよ」と常連さんに言われた店主とその女房は、そうは言っても券売機を入れるような金もないし…と困り果てる。
そこで亭主が券売機を手作りしてその中に女房が入り「音声認識」と評して女房が券売機をやることに…。
わさび師匠らしいシュールな新作。
小さな中華料理屋の老夫婦がお互いを思いやる様子が微笑ましい。
後で友だちに聞いたら、先月の月わさで作った三題噺とのこと。
できたてのほやほやの新作を披露目でかけるって…すごい!
池袋演芸場11月上席夜の部
清蔵が最初に現れた時は武骨で愛想もなくて失礼な感じだったのに
池袋演芸場11月上席夜の部
・夢花「転宅」
傑作はまだ
★★
「実の父親に言うのはおかしいけど、やっぱりはじめましてで、いいんだよね?」そこそこ売れている引きこもりの作家・加賀野の元へ、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子・智が突然訪ねてきた。月十万円の養育費を振込むと、息子の写真が一枚届く。それが唯一の関わりだった二人。真意を測りかね戸惑う加賀野だが、「しばらく住ませて」と言う智に押し切られ、初対面の息子と同居生活を送ることに―。孤独に慣れ切った世間知らずな父と、近所付き合いも完璧にこなす健やかすぎる息子、血のつながりしかない二人は家族になれるのか?その「答え」を知るとき、温かく優しい涙が溢れ出す。笑って泣ける父と子の再生の物語。
読みやすかったしハートフルなんだけど、へー…という以外の感想がなく…。
なにかこう…薄っぺらに感じてしまう。
私には合わないみたいだな、この作家さんは。
犬
★★★
初長編『鯖』が第32回山本周五郎賞候補
ブレイク必至!
今、最もキテル鬼才が放つ、狂乱の疾走劇大阪でニューハーフ店「さくら」を営む桜は63歳のトランスジェンダーだ。
23歳で同じくトランスジェンダーの沙希を店員として雇い、慎ましくも豊かな日々を送っていた。
そんなある日、桜の昔の男・安藤勝が現れる。
今さらと思いながらも、女の幸せを忘れられない桜は、安藤の儲け話に乗ることを決意。
老後のためにコツコツと貯めた、なけなしの1千万円を用意するが……。大阪発。愛と暴力の旅が、今、始まった。
嬲り、嬲られ、愛に死ね!
暴力シーンの凄まじさと、そうなることは分かっているのにずぶずぶとデンジャーゾーンに入って行く主人公に苛立って、読んだ直後は「この作家の本は二度と読まない!」と思った。
でも読み終わってからしばらくたつと、なんとなく気になってきて…あれはいったいなんだったんだろう、結局作者は何を描きたかったんだろう、ともやもやしてきた。
この作品から愛や人生を読み取ることは私にはできない、と思ったけど、いや…待てよ…と今は思っている。
他の作品も読んでみよう…体調がいいときに(笑)。
柳家小三治独演 銀座ブロッサム
そして赤ん坊が這い出してきてそれを目で追ってると袖から「
大好きだ。
きょんスズ
・さん助「めがね泥」
・小傳次「粋逸(スィーツ)天国」
・喬太郎「孫、帰る」
ショウコの微笑
★★★★★
高校の文化交流で日本から韓国へやってきたショウコは、私の家に一週間滞在した。帰国後に送り続けられた彼女の手紙は、高校卒業間近にぷっつり途絶えてしまう。約十年を経てショウコと再会した私は、彼女がつらい日々を過ごしていたと知る。表題作のほか、時代背景も舞台も異なる多彩な作品を収録。時と場を越え寄り添う七つの物語。
涙腺をピーポイントで刺激してくる作品が多くて、泣きながら読んだ。
高校の交流行事で知り合ったショウコとの交流を介して自分と家族に向き合う表題作。
ドイツの小さな村でベトナム人一家と韓国人一家の付き合いが過去の出来事によって引き裂かれる「シンチャオ、シンチャオ」。
フランスの修道院で出会ったケニアの青年への淡い恋心を描いた「ハンジとヨンジュ」。
心が触れ合う親密な瞬間と決定的に離れてしまう瞬間。人と人が分かり合うことの難しさ。家族だって分かり合うことは難しいのだから他人同士や国が違えば余計に…。
それでも心が触れ合った瞬間は本物で相手も時々思い出してくれていると信じたい。
繊細な描写がとても好みだった。
横浜にぎわい寄席
11/2(土)、横浜にぎわい寄席に行ってきた。
・こう治「やかん」
・昇輔「万病円」
・東京ガールズ
・勢朝「紀州」
~仲入り~
・さん助「磯の鮑」
・翁家喜楽・喜乃 太神楽
・歌春「加賀の千代」
昇輔さん「万病円」
まくらも落語もふわっと面白かった!どっと鯉さんの時に一度見ているけど、その時もなんか面白いなと思ってたんだな。
さん助師匠「磯の鮑」
芸協だと小痴楽師匠(そうか、もう師匠なんだ!)でよく聞いていたけど、落語協会で聴くことはめったにないイメージ。と思ってこのブログを検索したら小里ん師匠で二回聞いてた!
さらに明らか「鮑のし」なのに「磯の鮑」って書いちゃってる記事も見つけてしまった。
私、思い込みが激しいからなぁ…(恥)。
さん助師匠の「磯の鮑」は、与太郎もそんなにバカっぽくなくて、「女郎買いの師匠」もふわっと優しくて、与太郎の相手をする花魁もそれほど与太郎を気持ち悪がらない。
なんとなくふわふわっとした優しさがあってなんか好きだった。
翁家喜楽・喜乃 太神楽
ひやっとする場面があってドキドキした。
全く何の心配もせず見られる太神楽って実はほんとにすごいことなんだな、と改めて。
八人の招待客 (海外ミステリ叢書《奇想天外の本棚》)
★★★★
数あるクェンティンの作品から最も入手困難な中編二本立て!『そして誰もいなくなった』へと繋がる先行作とも噂される「八人の中の一人」そして「八人の招待客」は、ともに本格趣味の横溢する逸品!
古き良き時代のミステリーって感じ。登場人物が少なくて場面が動かなくて…昔のNHKの海外ドラマを見てるみたい。あるいは劇。
安心して読める。楽しめる。
最近全然本を読んでなくて何がいいかわらない、読みやすい本を読みたいな、という人におすすめ。
なんか久しぶりにこういうの読んだな。楽しかった。