ポトスライムの舟

ポトスライムの舟

★★★★

お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。

大好きな津村記久子さん。おおそうか、これが芥川賞をとった作品なのか！
「ワーカーズダイジェスト」に比べると、ほわほわ感が強いというか、よりもやっとした作品のような気がするんだけど、そこが評価されたのか？
他にももっといい作品はあるのになぁ！と思ってしまったりもするのだが、まぁ素人にはわからない選考の基準があるのだろう、多分。

もやっと感が強いポトスライムに比べ、２作目の「十二月の窓辺」の方はもう少しテーマがはっきりしている。
職場で明らかにパワハラを受けているツガワ。
誰も助けてくれない、一人孤立して行く手を塞がれるような毎日。唯一の救いは、時々一緒にお昼を食べる別の会社のナガト。
ナガトは一生懸命仕事をすればするほど仕事を押し付けられ無力感に襲われていた…。

働くことで得られる満足感、アイデンティティ。
働くことで失われていく自由、誇り、本当の自分。
そこらへんを描かせたら右に出る者はいないのでは。と言いたくなるようなこの空気感。
読んでいて辛いときもあるけれど、でも最後はぽんと背中を押してくれるような抜け感があってそこが癖になる。

でも私の中でのベストは「君は永遠にそいつらより若い」なのだなぁ。
またこういう作品を書いてほしいな。