りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

八光亭春輔独演会

9/9(月)、赤坂会館で行われた「八光亭春輔独演会」に行ってきた。

・一猿「武助馬」
・春輔「普段の袴」
~仲入り~
・春輔 幸田露伴「 幻談」&踊り

一猿さん「武助馬」
昨日の謝楽祭では、一朝一門でお店を出しました、と一猿さん。みそ田楽と一門グッズ。試しに作って食べてみようということになってこんにゃくを茹でてはみたものの…どこをどう探してもないんです…味噌が。味噌がないとどうにもなりませんから。パニックですよ。で、とある兄弟子が「大丈夫だから」と一言。おそらくおかあさんかおとうさんが届けて来てくれたものと思われます…どうにか味噌が到着し事なきを得ました。

そんなまくらから「武助馬」。これ、そんなに面白い噺じゃないと思うんだけど、一猿さんは特に独自のクスグリを入れたりしていないのに、ちゃんと面白かった!聞きやすいし間がいいからちゃんと笑えるんだな。いいなぁ、一猿さん。楽しかった。


春輔師匠「普段の袴」
自分の師匠、彦六師匠の思い出話。これが本当に面白い。木久扇師匠もよく彦六師匠の物まねをするけど、春輔師匠の話からもその様子が浮かんできて、ああ…こういう師匠だったんだろうなぁ、と想像できる。
毎朝7合の水をごくごく飲み(健康のため)、彦六体操をし(水を飲んだままじーっとしていると水が中で湯になってしまう、という彦六師匠独自の理論により)、それから仏壇の前に座って一通りお経をあげる。自分のお世話になって作家の先生、家族親戚、門弟…全員の健康と幸せを祈るところまでが、朝の儀式。

それからとってもせっかちで旅行に行く時は何時間も前に家を出てホームでずっと立って待ってたり…などのエピソードを紹介。楽しかったー。笑った笑った。

そんなまくらのあとに「普段の袴」。
独特の喋り方というか独特の調子があって、ああ、これが林家の芸なのかなぁ、と思う。全然違うんだよね。語り方が。でもそれがとっても面白くて楽しくて癖になる。
いろんな協会があっていろんな一門があってそれぞれの芸風があって…。この多様性が落語の魅力だなぁ!とっても面白かった。


春輔師匠 幸田露伴「幻談」
この「幻談」という噺は彦六師匠がやっていて、師匠が亡くなってからは誰もやっていなかった。自分の会をやる時に主催者から「やってみたらどうか」と言われ、いやこれは難しい噺だから…といったんは断ったものの、「合ってると思いますよ」とまで言ってもらったので、ではやってみようかということに。やるにあたっては勝手にやるわけにはいかない。作者の許可をもらわないと…ということで、現在幸田露伴の作品の管理をしている方に連絡をとったら「それならば会ってお話をしましょう」ということに。その家を訪ねて行って…という話がとても面白かった。もうそれだけで一つの文学作品のようで素敵。
幸田露伴 幻談

お話として淡々と語りながら、巧みな情景描写…そして物語が動くところは独特の間でもってたたみかけてくるので一瞬自分が落語を聴いていることを忘れ、物語の世界に引き込まれる。うおおお。これは…またとても面白い。笑いどころのない噺だけれど、こういう作品も落語としてみることができるというのは、すごく新鮮だし嬉しい。そして先代の彦六師匠というのはこういう芸だったのかなぁとぼんやり思う。他の誰とも違う落語。すごい魅力的だ。

そして怖い噺だったから…なのかな、最後に踊りも披露してくださって楽しくお開き。