父と私の桜尾通り商店街
★★★★
桜尾通り商店街のはずれでパン屋を営む父と、娘の「私」。うまく立ち回ることができず、商店街の人々からつまはじきにされていた二人だが、「私」がコッペパンをサンドイッチにして並べはじめたことで予想外の評判を呼んでしまい…。平凡な日常は二転三転して驚きの結末へ―見慣れた風景が変容する、書き下ろしを含む全六編。
どの物語にも他人とうまく関われない人たち。
生きるスピードが違っていたり、人との付き合い方の濃淡のバランスがおかしかったり、根本的に自信がなかったり。
ふんわりとしたタイトルが付いているがどの話もぞっとするような孤独と異世界に通じているのかもしれないと思わせるような闇が見えて、読んでいてぞくぞくする。
一方通行の想いは相手を引かせるけれど、程が良ければそれで済む話なんだろうか。
今まで読んだ今村さん作品の中ではざわざわ度は控え目だったけれど、読み終わったときに笑いたいような泣きたいような気持になるのは前作同様。面白かった。