りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭11月下席夜の部

11/30(木)末廣亭11月下席夜の部に行ってきた。

・小天華 マジック
・竜楽「味噌豆(外国語メドレー)」
雷蔵「置き泥」
~仲入り~
・松之丞「違袖の音吉」
・右左喜「金婚旅行」
・圓馬「手水廻し」
・喜楽・喜乃 太神楽
・松鯉「荒川十太夫」


竜楽師匠「味噌豆(外国語メドレー)」
円楽師匠の弟弟子らしい。
全く知らない師匠だったので期待してなかったんだけど、面白かった~!
円楽は落語芸術協会に所属しましたけど私はそうじゃない。でも芸協と兄弟子のおかげでこうして寄席に出していただくことができてうれしい。
でもこうやって一人許すと不法入国が増えてしまうということですね。だからトランプの言ってることもまんざら嘘じゃないですね、に笑う。

海外で落語をされているらしいんだけど、その場合はその国の言葉でやっている、と。
国による言葉の違い(イタリア語はジェスチャーが派手、ドイツ語は堅くてまじめ、中国語は独特の高さ、など)や国民性の違い。
フランスでやった時はウケないウケない。たまにウケて笑っても「はっ」と鼻に抜ける笑いでバカにされてるみたいで余計傷つく。
そんなまくらから「今日は海外からのお客様はいらっしゃいませんね。じゃ日本語で」と「味噌豆」。
テンポがよくて間がよくて気持ちのいい落語だったんだけど「今日はせっかくなんでこの噺を外国語メドレーでお送りします」と6か国語でやったんだけどこれがまたすごく面白い!
頭のいい人だなぁ~。でもそれが全然嫌味じゃなくて楽しい。すごいすごい。円楽師匠が出るより全然面白かったと思う!よかったー。


松之丞さん「違袖の音吉」
今日もものすごい拍手と「待ってました」に迎えられる松之丞さん。すごいなー。
「今日はうちの師匠がトリでじっくりやりますので…私は明るくばかばかしいやつを」と「違袖の音吉」。テッパンですね。
何回か聞いてるけど楽しいなぁ~。この間の「雷電」は正直イマイチ…と思ったけど、これは面白かった。
講談でここまでやっていいのか!というバカバカしさ。でもふざけてるだけじゃなく講談らしいところもあってバランスがいいんだな。
楽しかった。


圓馬師匠「手水廻し」
そしておとといと同様、鬼のように盛り上がった後にしーーーんと冷え切った状態になり、そこに登場の圓馬師匠。きびしい…。どうするんだろうと思っていたら、なんと「手水廻し」!
これ、前に広小路亭で見てひっくり返るほど笑って、また見たいとずっと思っていた噺!
いやもうほんとにバカバカしくて楽しい。
大阪から来た客に「手水を廻してくれ」と言われた女中が「ちょ、ちょうずう?」って変なイントネーションで言って、その後主人のところで「ちょうずぅをまわしてくれとおっしゃってます」と言うと主人も「ちょうずぅ?それはあたしじゃない、調理場に言ってもらわないと」。
そのあとに和尚の所に行って「ちょうずをまわすとは頭の長い人を回すことだ」と図式の手紙をもらってくる…「顔じゃない、ここから下じゃなく上ね。この長さね」と念を押すばかばかしさ…。しかもそういう人を連れてくるし!

圓馬師匠ってすごくきれいな噺家さんで話し方もとてもきれいなのに、それがとことんバカバカしいこの噺をとことんまじめにバカバカしくやるのがおかしくておかしくて。
もう最初から最後まで大笑い。最高だったー。


松鯉先生「荒川十太夫」

荒川十太夫は三両五人扶持という身分の低い侍。それが赤穂浪士の墓参りに行った際に供の者を連れ立派な身なりでいるところをお目付け役の侍に見つかってしまう。
住職から荒川十太夫が「物頭役」と名乗っていることを聞き、身分詐称を見逃すわけにはいかないと殿に報告をすると、
話を聞いた殿は「荒川十太夫といえば、堀部安兵衛介錯人を立派につとめた男。何か訳があるに違いない。私が直接取り調べをする」と言う。

最初は言い訳のしようもないからお裁きをと言っていた十太夫だったが殿に優しく問われて「それならば」と語り始める。
堀部安兵衛介錯する段になって十太夫に名前と身分を尋ねてきたが、自分があまりに低い身分なのでそれでは申し訳ないと思い咄嗟に「物頭役」と嘘をついてしまった。それを聞いた安兵衛は「そんなに身分の高い者が介錯人をしてくださるのか」と喜んで死んでいった。
自分はそんな嘘をついてしまったのがとても申し訳なく、しかしそれを信じて切腹した安兵衛の気持ちを想うと、せめて墓参りの時は「物頭役」になって伺わなければと思い、供の者を雇い貸衣装を着て参っている。
このために内職をして食うや食わずで金をこしらえて咎を受けることも覚悟して嘘を突き通そうとした十太夫に対して、殿は「あっぱれである」と褒めながらも、身分詐称の罪は消えないといって謹慎させる。しかし謹慎があけたのちは十太夫を本物の物頭役に取り立て、ものすごい出世をした。

松鯉先生の語りに威厳と品があるので殿様が本当に殿様らしくて、本当にその場面を見ているよう…。
静かな迫力に満ちていて、最初から最後まで息を殺して聞き入ってしまった。
素晴らしかった!