りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

書物愛 [海外篇]

書物愛 海外篇

書物愛 海外篇

★★★★

書物の魔力に取り憑かれた人々の、滑稽でもあり悲しくもある姿を描いた作品ばかりを、本の達人が選びに選び抜いて編んだ、傑作アンソロジー・海外篇。本好きを自負する人々であれば身につまされ、ビブリオマニアの何たるかをまだご存じない方々は、未知の世界に仰天すること間違いない、読書人必読の書。

【収録作品】
ギュスターヴ・フローベール「愛書狂」
アナトール・フランス「薪」
オクターヴ・ユザンフ「シジスモンの遺産」
ジョージ・ギッシング「クリストファスン」
M・R・ジェイムズ「ポインター氏の日記帳」
H・C・ベイリー「羊皮紙の穴」
シュテファン・ツヴァイク「目に見えないコレクション」
シュテファン・ツヴァイク「書痴メンデル
マイケル・イネス「ロンバード卿の蔵書」
ジェイムズ・グールド・カズンズ「牧師の汚名」

書物への偏愛が過ぎて常軌を逸していく人たち。本の中身よりは本そのもの、古書や希少本にとりつかれる話が多い。
求めるあまり正気を失ったり不幸に見舞われる話が多いのに、なぜか彼らは幸せそうにも見える。
世間から隔絶された小さな世界で好きな本のことだけ考え財産の全てを注ぎ込む。ある意味こんな幸せな生き方はないのかもしれない。

とくにツヴィクの2編は印象深い。
イビツな人間の話だが、彼らに寄り添う貧しい人たち、そして彼らを見つめる作者の目がとても優しい。

わりと古めかしい翻訳なのか読みづらくてちょっと苦労したのだが、それはそれで味わいがあってよかった。