りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

血の探求

血の探求

血の探求

★★★★

1974年の晩夏。休職中の大学教授である“私”は、サンフランシスコのダウンタウンにオフィスを借りた。そこは元続き部屋で、内部には隣室につながるドアがあった。ある日、そのドアから精神分析のセッションが聞こえてきた。“患者”は若い女性で、養子のため自分の出自がわからず、アイデンティティの欠落に苦しんでいた。“私”は息を殺して、産みの母親について調べる患者の話に耳を傾け続け、やがてふたりに気取られないようにしながら母親捜しの手伝いを始める。彼女はなぜ養子に出されたのか。“血の探求”の驚くべき結果とは―。本文のほとんどが盗み聞きで構成された、異色かつ予測不可能な傑作ミステリ。

まさかこういう話だとは。
分裂症気味の男がオフィスの隣の部屋のセラピストと患者の話を盗み聞き、という始まりだったので、ジャンキーなストーリーが展開されていくのかと思ったら…。

ホロコーストについて語りながら、登場人物が精神的に病んでいたり家族の問題を抱えていたりして、それゆえ人種の問題もより身近にとらえられるものの、若干違和感もある。
人種そのものを否定されることの悲惨さを親から否定されることと比べるのもどうなのかとは思うが、そうでもしないと実感を得られないということなのかなぁ。

とは言うものの、この設定ゆえに読書スピードが上がったことは確かだし、読後感も含め、やりやがった!という爽快感もあった。なかなか。