りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

解錠師

解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

★★★★★

アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞/英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞/バリー賞最優秀長篇賞/全米図書館協会アレックス賞】 
けっして動かないよう考え抜かれた金属の部品の数々。でも、力加減さえ間違えなければ、すべてが正しい位置に並んだ瞬間に、ドアは開く。そのとき、ついにその錠が開いたとき、どんな気分か想像できるかい? 八歳の時に言葉を失ったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠も開くことが出来る才能だ。やがて高校生となったマイクは、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり芸術的な腕前を持つ解錠師になる……プロ犯罪者として非情な世界を生きる少年の光と影を描き、世界を感動させた傑作!

面白かった!
主人公マイクは子どもの頃陰惨な事件に巻き込まれ両親を失い叔父に引き取られる。またそのときのショックから言葉を失ってしまい、一言も発することがない。
カウンセラーからもさじを投げられたマイクは学校で友だちも出来ず生き地獄のような生活を送っていたのだが、ある日絵の才能を教師に見出され、そこから道が開けてくる。
初めて出来た友だち。今まで一人ぼっちだっただけにこの友情がどれだけうれしかったか…それを思うともう読みながら涙が…。
それなのに、ある事件に巻き込まれ、マイクは犯罪の道に足を踏み入れてしまう…。

主人公マイクが運命に流されるように犯罪に巻き込まれていくのが読んでいて本当に辛い。
初めて出来た愛する女性アメリアを守りたい一心で、誰にも相談することもできず、抜き差しならない世界に足を踏み入れてしまうのが、もうかわいそうで…。
それでも、天才的な解錠師ゴーストから解錠のテクニックを教わる過程は、読んでいてワクワクするし、マイクがその研ぎ澄まされた聴覚と感覚を駆使して鍵を開けるシーンは、ものすごくかっこいい。

どうしようもないほどの孤独を知っているからこそ、大切なひとを見誤ることはないのだなぁ…。
ミステリーでもあり、極上の青春小説でもある。良かった。