時のかさなり
- 作者: ナンシーヒューストン
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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うわ、これはまた独特な小説だった…。さすが新潮クレスト。クレストにはハズレがないなぁ…。(好き嫌いは別として)
わたしにこの声をくれたのは誰だろう――。2006年フェミナ賞受賞の話題作!
ナチス統制下のドイツから、カナダ、イスラエル、そしてブッシュ政権のアメリカまで。四代にわたる六歳の子供たちが語りだす、ある一族の六十年。血の絆をたどり、絡まりあう過去を解きほぐしたとき明かされたものは、あまりに痛ましく哀しい真実だった――。フランスで二〇万部突破、魂を揺さぶってやまない最高傑作長篇。
物語は4つの章から成る。
1章は2004年カルフォルニアで裕福な家庭に育つソル、2章はソルの父ランダル、3章はランダルの母セイディ、4章はセイディの母クリスティーナの物語。
1章に出てくるソルというのが実に胸糞悪いガキで、いったいこれはどういう小説なのだ?何が言いたいのだ?とこのまま読み続けようかどうかちょっと悩んじゃったよ。
でも1章に出てくる父ランダル、セイディ、クリスティーナがとても強烈だったので、彼らの章はきっと面白いに違いないと思い、我慢して読み進めていったんだけど、これがもう大正解!
一族には彼らの血族の証というようなアザがある。
ソルとその母親にとったらそれは汚点以外の何物でもない。
このアザがランダルにとったら勇気の証で、セイディにとったら<敵>で、クリスティーナにとったら心の拠り所である。
アザの受け止め方は、彼らの人間性とか育てられ方に依るところが大きい。そういう意味で、子どもは大人(親)の被害者のようにも思える。でもその子どもも大人になって自分の子どもに対しては加害者になってしまうのだな…。
物語が世代をさかのぼって語られていくということで徐々に事実が明らかになっていくというミステリーのようなつくりになっている。
子どもには謎でしかなかった親の行動の意味が、読みすすめるうちに徐々にわかっていく。
しかし各章がそれぞれ6歳の視点から語れているので、なにもかもが鮮明に明らかになるわけじゃない。そこがミソかな。
うまくまとめられないので箇条書きで追記。
・絶対的な悪、絶対的な善というのは存在しない。
・立場が違えば見方も違うし、ある時点でAが間違いを犯しBがその被害者だったからといって、その関係が永遠に続くわけではない。
・常に監視されたり否定され続けて育つと自分を肯定することは難しい。
・常に肯定されて育っても、それはそれでスポイルされてしまう。
・戦争の強烈な体験が、世代が進むにつれ薄れていきまた同じ過ちを犯すことになる。