被害者を捜せ!
- 作者: パット・マガー,中野圭二
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1984/02/03
- メディア: 文庫
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「七人のおば」がとっても面白かったので、時間をかけてちょっとずつ読んでいこうと思っているパットマガー。
思えば「七人のおば」も被害者探しだったから、これと同じスタイルなんだな。
第二次大戦下、異境の地にいる海兵隊員の唯一の愉しみは、故国からの新聞や雑誌を廻し読みすることだった。そんなある日、新聞で、ぼくの勤めていた〈家善協〉でぼくのボスが殺人を犯したのを知った。でも、記事がちぎれているので被害者がわからない。そこで、ぼくの話をもとに戦友仲間で被害者捜しをすることになった……。
第二次大戦の時に海兵隊員が暇つぶしに被害者捜しをして賭けをするっていう発想がすごい…。
ニュースに飢えている彼らは、荷物の隙間を埋めるために入れられていた新聞をむさぼるように読むんだけど、その中で「ぼく」の勤めていた会社でボスが殺人を犯したことを知るのだ。だけど、下のほうが破れていて、誰を殺したかがわからないのだ。
で、みんなで被害者捜しの賭けをすることになるのだ。
賭けをするためには推理をするための材料が必要だということで、「ぼく」が勤めていた会社「家善協」の話をするのだ。そもそもこれはどういう組織だったのか。ボスはどういう人で彼の恨みを買いそうな人物はいたのか。
「七人のおば」を読んでいたので正直言って新鮮味はなかったのだが、いやでも面白いわ、これも。
推理小説としてみたら「えええ?そんなのあり?」なんだけど、この小説の魅力はそういうところにはないのだ。
小さな組織で、集まった一癖も二クセもあるような人たちが、押したり引いたりくっついたり離れたり…それを安全な場所(それが戦地っていうのもどうかと…)から見てあれこれ推理するという面白さ。
「七人のおば」もそうだったけど、殺したくなるような人がごろごろ出てくるのだわ、これも。
そしてこのラスト!この落とし前の付け方はすごいですよ、ある意味!
ありかなしかで言えばありだ。私はね。
でも怒る人もいるんじゃないかな?
以下ネタバレ。
温厚で我慢強い(強すぎる?)ボスなんだけど、事件が起こる前に2回だけ、「この人殺人を犯してもおかしくないかも…」と思わせるような行動をとるのだ。
きっとそれが何かの鍵になっているんだろうなと思いながら読んでいたんだけど。
「彼女のやることが彼にとって(怒りの)ツボだった」って、あなた…。いやまあそういうことあるけどね。だけどそれが動機ってね…。やりやがるね。わはははは。