むずかしい愛―現代英米愛の小説集
- 作者: 柴田元幸,畔柳和代
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1999/08
- メディア: 単行本
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柴田元幸が集めてきた愛をテーマにしたアンソロジー。愛といっても、ここに集められたのは、一癖も二癖もあるような愛ばかり。
冒頭でいきなり二人の愛を完璧なものにするために、お互いの耳と目をえぐってしまう「私たちがやったこと」。比喩かな、と思ったのですが、そうではなく、平然と物語がすすめられてゆきます。そして衝撃的なラスト、、、。
私が気に入ったのは、1つは、ウィリアム・トレヴァーの「調律師の妻たち」。これは最初の妻が亡くなって二番目に結婚した妻(実は一度目の結婚のときに、こちらを振って結婚した)の話。ようやく順番がまわってきたものの、調律師はかなり年をとり、彼の経験や知識は全て前妻が口で彼に伝えたことばかり。彼の仕事も楽しみも家のすみずみどこもかしこも、前妻の影がついてまわる。そこで彼女がとった行動は、、、という内容で、淡々とした文章のなかに、苦みばしった(?)ユーモアがちりばめられていて、にやりとさせられました。
近親相姦を示唆するグレアム・スウィフトの「ホテル」、ちょっと物悲しいウォルター・モズリィの「テレサへの手紙」もよかった。
この短編集の最後におさめられたジョン・クロウリーの「雪」も、奇想天外で好みでした。でも前にこの人の長編を読んで、手に負えん!と思った覚えが、、、。
柴田元幸くらいになると、自分で持ち込みができるんだなあ、いいなあ。でも彼のおかげで、いろんな作家を読めて幸せ。