りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場6月上席昼の部

6/5(水)、鈴本演芸場6月上席昼の部に行ってきた。

・市若「堀之内」
・ほたる「子ほめ」
翁家社中 太神楽
・一之輔「出来心(まぬけ泥)」
・ニックス 漫才
・さん助「熊の皮」
・一朝「巌流島」
・ペペ桜井 ギター漫談
・菊丸「ちりとてちん
~仲入り~
・美智・美登 マジック
・小ゑん「過多ラーメン」
・燕路「お菊の皿
・小猫 動物ものまね
・甚語楼「お見立て」

一之輔師匠「出来心(まぬけ泥)」
「寄席っていうのは緩いからいい。お客さんもぼーっとしてる。気合を入れて落語を聴いてやろうぜという姿勢が見えない。だからやる方も25%ぐらいの力でやる。それがいい」。
25%の力でやった「まぬけ泥」(笑)。それでも面白いんだからずるいなぁ~。いやでも確かに全然力入ってないし「笑わせてやろう」という気負いもないしゆるく楽しんでる感じ。余裕だなぁ。

さん助師匠「熊の皮」
なかなか家にあげてもらえない甚兵衛さん。
洗濯は毎日してるから好きだけど腰巻は洗えないよと小さな抵抗。でも干し終わると嬉しそうに「やってきた」と報告する従順さがかわいらしい。
甚兵衛さんを迎える「先生」もかなり変人っぽいのがさん助師匠独特。
久しぶりに先生が嬉しくて滑るような変な動きをするところが見られてうれしい。
「甚兵衛さん…あたしゃお前さんのことが少し嫌いになったよ」のセリフもしっかり。
楽しかった。

一朝師匠「巌流島」
最初から最後まで完璧。楽しさしかない。これ以上の「巌流島」はない気がする。たまらない。

菊丸師匠「ちりとてちん
昼の部のお客様にぴったりなんだなぁ、菊丸師匠の落語が。
わかりやすい面白さ、なのかなぁ。
え?ここで笑わないの?というお客さんたちが菊丸師匠の落語にはピタっとピントが合う感じ。
なんかすごいな、と思う。

小ゑん師匠「過多ラーメン」
初めて聴く噺。
いやこれはもう最初から最後まで全部面白くて、サゲがもうたまらない!絶妙の間でめっちゃかっこいい!!
小ゑん師匠の落語ってJAZZなのかもしれない。痺れた~。

小猫先生 動物ものまね
物まねの精度ももちろんのこと、トークがほんとにうまい。もう楽しみでならない。
アルパカが大うけで「今日のお客様には、人間に喩えるのが合ってるようですね」と、猿の鳴き声。笑った笑った。

甚語楼師匠「お見立て」
テッパンの面白さ。杢兵衛と喜瀬川の間を行ったり来たりする喜助のとほほぶりがほんとに楽しい。
表情、テンポ、押しと引きのバランス、すべてが完ぺき。
…なんだけど、甚語楼師匠のトリの時に「お見立て」に当たる確率が高いので、別の噺も聞きたかったな、とも思う。ファンとはどこまでも勝手なものなのです。

夜が暗いとはかぎらない

 

夜が暗いとはかぎらない

夜が暗いとはかぎらない

 

 ★★★★★

奇跡が起きなくても、人生は続いていくから。
『大人は泣かないと思っていた』で話題沸騰の著者が贈る感動作!

大阪市近郊にある暁町。閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。いったいなぜ――? さまざまな葛藤を抱えながら今日も頑張る人たちに寄りそう、心にやさしい明かりをともす13の物語。

とてもよかった。読んでいて何度か泣いてしまった。

あかつきマーケットのマスコット・あかつきんを軸に商店街の近くで生きる人たちを描いた連作短編。

親からかけられ続けた呪いの言葉。黙って見つめるまなざしの優しさ。自分が発していた無言のメッセージで相手を縛ること。誰かを好きになること。好きになられること。

職場や学校や家庭の中で孤立をしたり誰かの一言に救われたり傷つけられたり助けられたりしながら毎日を生きている。
ドラマのような奇跡は起きなくても一歩だけ前に進めたら真っ暗に見えた夜にも光が射すのかもしれない。ラストもとてもよかった。大好きだ。

鈴本演芸場6月上席昼の部

6/1(土)、鈴本演芸場6月上席昼の部に行ってきた。

・木はち「子ほめ」
・ほたる「たらちね」
翁家社中 太神楽
・才賀「台東区の老人たち」
・圓太郎「真田小僧
・ニックス 漫才
・さん助「狸賽」
・一朝「強情灸」
・ペペ桜井 ギター漫談
・菊丸「たがや」
~仲入り~
・美智・美登 マジック
・小ゑん「ほっとけない娘」
・燕路「出来心」
・小猫 動物物まね
・権太楼「火焔太鼓」


さん助師匠「狸賽」
若い男たちが集まって博打をやっているのを見て自分も入ってやってみたいと思ってる狸が化けずに入って捕まってしまう小話。狸が「そうだ、途中で帰る人に化けて入ってやろう」というセリフがないと、初めて聞いた人にはなんのことかわからないような気がする。
この日、初めてのお客さんが多かったので、小話で笑いが起きなくて、さん助師匠いきなりピンチ(笑)。

恩返しに来た狸に最初は「何もしなくていいよ」と言っていた男が、狸が化けられるとわかったとたんに「じゃサイコロに化けて博打の手助けをしてくれよ」と頼むところも、ちょっとわかりにくかったかなぁ。
そうなると狸に目の説明をしたり、博打場に出かけて行ってからの場面も、ついていけなくなっちゃうんだなぁ。
なるほどー。
さん助師匠の「動物」って妙な可愛らしさと哀れっぽさがあって好きなんだけど、ちょっとしょんぼり…で残念だったな。
がんばれー。(笑)

菊丸師匠「たがや」
テンポの良さと分かりやすさでお客さんがぐぐっと惹きつけられていくのがわかる。すごい。この日のお客さんにはぴったりだったんだなぁ。

首がすぽんと跳ね上がって「たーがやーー」なんて猟奇的だけど、あくまでも落語だからひたすらにばかばかしい。
楽しかったし、その掛け声とともに仲入りに入るカッコよさといったら。


権太楼師匠「火焔太鼓」
めちゃくちゃ面白かった!!
おかみさんが怖い怖い(笑)。「お前さんは商売が下手」と言われて「そうか、俺は商売が下手だな」。「お前さんはだまされやすい」と言われて「そうか、俺はだまされやすいな」。「お前さんは間抜け」と言われて「そうだな、俺は間抜けだな」。
洗脳される甚兵衛さんのおかしさったら。
お屋敷に入って歩き出した途端に「ぎゃーーーーー」と悲鳴をあげて、「松の木がある!しかも下で焚火をした跡が残ってる!!」には大笑い。

爪印を真っ赤になるまで押しちゃうところも、小判を見て我を失うところも、しぐさも声も大きくてめちゃくちゃおかしい。
ほんとに爆笑とはこのことを言うんだなというような高座で楽しかった~。

柳家小三治”春の会”

5/31(金)、中野ZEROホールで行われた「柳家小三治”春の会”」に行ってきた。


・〆治、一琴、三三、三之助、小はぜ、小ごと、マネージャー トーク&くじ引き
・小はぜ「まんじゅうこわい
・三之助「棒鱈」
・三三「元犬」
~仲入り~
・一琴 紙切り
小三治厩火事


〆治師匠、一琴師匠、三三師匠、三之助師匠、小はぜさん、小ごとさん、マネージャー トーク&くじ引き
三三師匠が描いた小三治師匠のイラスト入りのトートバッグを開演前に販売していて私もウハウハと買ったんだけど「おひとり様一個」だった。
それはお客様がどれぐらい買われるかわからなかったのでそうしたんだけど、実は…まだ余っております、と三三師匠。仲入りの時にまた販売しますのでほしい方はぜひ複数お買い上げください、と。わーい!

それから師匠以外は誰が出るかまだ決まってないということで、くじ引き。
星とハートの絵が書いてあるうちわを全員が引いて…今回は星を引いた人が高座を務めることに。
小三治一門でこういうわいわいがやがやって珍しいから見ていてとても楽しくて嬉しかった。

小はぜさん「まんじゅうこわい
袖に下がらせてもらえずいきなり高座に上がったのでおそらくパニック状態の小はぜさん。
「噺の方にはいろんな登場人物が出てまいります」というのを何回か繰り返して、なかなか何をやったらいいか決まらない様子。がんばれ~。
まんじゅうこわい」、これは芸協の方に教わったのかな。夢丸師匠かな。
若い連中のわいわいがやがやが楽しい。おそらく小はぜさんの心の中もさきほどのくじ引きのわいわいがやがやが続いているのかなと思って微笑ましかった。

三之助師匠「棒鱈」
さきほどの抽選の時に「今日高座に上がりたい人」と聞かれて誰も手を挙げませんでしたけどそれには訳がありまして…と三之助師匠。
我々噺家ですから落語をさせていただかないと話にならないわけで誰もが高座に上がりたいと思ってはいるんですよ。ただ今日はですね…普段こういう会ですと我々自分の出番じゃないときは楽屋にいるわけなんですが、今日は…全員が…袖にいるんです。ということは…師匠も…いるわけで…師匠に落語を聞かれるというのはですね…おわかりいただけますか。

そんなまくらから「棒鱈」。
たしかにこれはたちが良くないわ…とわかるほどの酔っ払いぶりと、隣の田舎侍のご機嫌ぶり。会場を大いに沸かせていた。


三三師匠「元犬」
こういう会で三三師匠を見るの、とっても久しぶり。
「元犬」、以前何回か見たことがあったけど、シロの元犬っぷりとお手をされてまんざらでもないかずさ屋さん。独自のギャグがたくさん入ってサゲも独自。

私は正直あんまり…なんだけど、うーん。師匠に怒られないかな、なんていらぬ心配?


一琴師匠 紙切り
前に見た時よりさらに腕を上げているような…。切ったもののクオリティもそうだけど、スピードが上がっていてびっくり。
トークも絶妙ですごいなぁ。

 

小三治師匠「厩火事
今日のこの会、袖で見たり楽屋のモニターで見ていましたが…お客様の本当に暖かい雰囲気に…ほんとにありがとうございます、と小三治師匠。

でも私は今日は袖にいて落語をやっておりてくる者たちに…小言ですよ、ずっと。
そうじゃねぇんだ、違うだろう、ってね…。
最初にあがったやつにも…それから次にあがった三之助にもね…。あれは「棒鱈」って噺ですけど、部屋にいる二人組と隣の田舎侍。これの声の大きさが一緒で遠近感が出てない。ウケるからってどちらも大きな声で大げさにやって…そういう噺じゃねぇんだって…。

あと最初にくじ引きして出番を決めたり仲入りの時になにかグッズを売ったりね。
噺家っていうのは何か作ってお客さんに売ったりしたがるものですけど、私は…うちの師匠はそういうことは喜びませんでしたよ。
ラーメン売ったり…そういうのはね…でもそういう一門はそれでいいんです。お客さんだって喜んでいるわけだし、みんながみんな同じ方向を向いてる必要はない。いろんな一門があってそれが寄り合って協会作ってるわけで…いいと思います。
でもうちの師匠はね…違ってた。

まぁ私ももうあんまりうるさいことは言いたくねぇやと思ってるし、弟子たちがやりたいようにやらせてやりたいとも思ってますから。
落語の小言もね…言う時は勇気がいりますよ。おい、お前はじゃぁそれだけのもんなのか?そんなに違うのか?って声が自分の中で聞こえてますから。気が付けばもう60年ぐらいやってますけど…それでもまだまだだって自分でわかってますから。
うちの師匠の噺はほんとにおもしろかった。「道灌」なんてね…たいして面白い噺じゃねぇのに師匠がしてるとなんともいえずおかしかった。「ちはやふる」だってほんとにおもしろかった。お前のも悪くないよと言ってくれる方もいるけど、まだまだです。全然違う。

私が師匠のところに弟子入りをお願いしに行ったとき、おやじも付いてきました。
おやじは私に大学に行ってもらいたがっていた。だから「落語家になるにしても、これからは教養が必要な時代になっていくから大学に入ってほしい。それからだって遅くない」というようなことをおやじが言って、師匠もそれを否定はしなかった。
私はでもそれを聞いて「それは違う。落語家に大学なんか必要ないんだ。教養のある落語なんてものはいらない。落語はそういうものじゃないんだ」って思わず言ってました。
それから10年して真打になったときに、師匠のご贔屓さんから言われました。師匠が「あいつ、入門の時、こんなことを言いましてね…」って嬉しそうに言ってたよ、って。
それを聞いて私は本当に嬉しかった。師匠はその時もその後も、私には一言もそんなことは言わなかった。だけど嬉しいと思ってくれていて本当に心を許してるお客様にそう言ってくれていた。
嬉しかったです。

…この話はあんまりしたことはないんです、とおっしゃっていて、私も初めて聞いたのでなんか胸がいっぱいになって涙が出てしまった。
「お前の噺はおもしろくねぇな」と言われたという話は何回か聞いていたけど…それは聞くたびになんて厳しい言葉なんだろうと思ったり、でもそう言ったらこいつは自分でもっと深く考えてすごいことになるだろうと思う信頼があったからこその言葉だったんだろうなと思ったりするんだけど。
入門の時の自分の青臭い…でも心からの想いを、師匠が内心喜んでくれていたって聞いたら、それはもう本当にうれしいだろうなぁ…。宝物のようなひとこまを話してくれたことにじーんときたなぁ。

袖から「時間がありません」の声をかけられて「だったら落語を短くやるからいい」と言って、そういう話を聞かせてくれた。
そんなまくらから「厩火事」。

うおおお。小三治師匠の「厩火事」は久しぶり。
なんかとてもエモーショナルな「厩火事」だった。
おさきさんに相談されたご隠居が、自分が大事にしている馬が失われたときに、それよりもなによりも家臣にケガがなかったかということを真っ先に聞いた孔子と、奥方の体のことはこれっぱかりも聞かずに瀬戸物が割れなかったということだけを聞いた麹町の主人、「ここに大きな違いがあるんだ」ということを強く言っていて…その前に話していたことと繋がってるんだなぁという…なんかメッセージ性を強く感じさせられた。
それだけに、惚れてる亭主を試すおさきさんの不安と自分の体を心配してくれたことに対する安堵…そしてこのいかにも落語らしいけむに巻くようなサゲが、なんかいいなぁ…一筋縄ではいかないなぁという感じがしておかしかったなぁ。

楽しい会だったー。小三治師匠に小言を言われながらも、またやってほしいな。

路地裏の子供たち

 

路地裏の子供たち

路地裏の子供たち

 

 ★★★★

うらぶれた路地裏が冒険と発見に満ちていた子供時代を叙情豊かに描くデビュー短篇集。夏になるとどこからか現れる行商人の秘密を知った「パラツキーマン」。高架下の廃屋でたくさんの鳥たちと暮らす風変わりな男との邂逅を描く「血のスープ」。少々ネジが飛んでいるけれど子供たちのいい遊び仲間だった「近所の酔っ払い」。人生の岐路に立った少年二人が夜更けの雪の町をさまよう「長い思い」。映画の恐怖が現実に忍び込んできて逃げ惑う少年を描く「ホラームービー」。不思議な生業を営む叔父との奇妙な日々が胸を打つ結末に行きつく「見習い」など珠玉の11篇に、日本版特別寄稿エッセイを収録。 

 「シカゴ育ち」を読んだのはもう20年前だったか。これはダイベックのデビュー作とのこと。

短編集だが、問題を抱えた家庭の子供の話が多い。

悪い方悪い方へと自ら進んで流れていったり、逃れてきたはずの故郷へ戻ってきたり、ドロップアウトした友だちを見捨てたり、あるいは見捨てられたり。違う国の話なのになぜか懐かしい。それもノスタルジックに浸るような懐かしさではなく、せっかく今まで忘れていたのにと腹が立ってくるような懐かしさ。

面白かったけどちょっと絶望。

白酒・甚語楼二人会

5/29(水)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼二人会」に行ってきた。

・きよひこ「狸札」
・白酒「真田小僧(通し)」
・甚語楼「愛宕山
~仲入り~
・甚語楼「普段の袴」
・白酒「木乃伊取り」


白酒師匠「真田小僧(通し)」
札幌、新潟の落語会に行ってきたというまくら。
「ありがたい限り」と言いながら言葉の端々に毒が混じっていて笑ってしまう。
新潟ではテーマを「ファミリー」にしているものでお子様のお客様もいるというのに噺家は気にせず「お見立て」なんかやってしまう。お見立てのどこがファミリーなんじゃ?と思っていると「俺たちはファミリーみたいなもんじゃねぇか」と無理やりなセリフが挟み込まれるというのにも笑った。
そんなまくらから「真田小僧(通し)」。
子どもがどんなに極悪なことを言っても、ふっくらした体型とニコニコ笑顔でなぜか許せてしまう。
白いお洋服を着たおじさんの一件では、父親がどんどん前のめりになってきて本泣きになるおかしさ。
最後は言われる前に10銭出しちゃう。
聞き飽きた噺だけど、スピードと勢いにつられて大笑いだった。


甚語楼師匠「愛宕山
京都は山が多いというまくらから「愛宕山」。
ああだこうだと御託を並べていた一八が覚悟を決めて山を登り始めたところ。
歌を歌いながら息が上がっていく様子を一八の歩いてる様だけで表してるの、すごい。汗をぬぐったり、表情がどんどん曇ってきたり、動きが鈍くなってきたり…。
お尻を押してもらってまた元気づくところも、後ろから押すしぐさと一八の元気になるところの対比。お尻のかさぶたを押されて痛いのと、痛くないところを押されてくすぐったいのの交互の反応。これがなんかリズムが良くて見ていて楽しくなる。あーやっぱりこの噺は音感がないとだめな噺なのかも。
旦那たちと合流したところでは、山の風景が見えきて涼しい風が感じられる不思議。
かわらけ投げも、端を欠いて投げて落ちて行く様子が見えるようで、楽しい。

落ちた小判を拾いに行きたくて傘を持ってどうにか落ちようとするところ。
怖い、行きたい、金がほしい、でも怖い、の葛藤がはっちゃけてて楽しい。
旦那が長吉に「押してやれ」と耳打ちするのも、本当に一八が落ちて行って、「ことによったら一八は最初からいなかったことに」と旦那がつぶやくのもダークな一面が見えておかしい。
お金を拾うところや縄をこしらえるところも、音楽を聞いてるようなリズムの良さ。
枝をしならせるだけしならせてびゅん!と上がって来たところも動きがあっておかしくて楽しかった~。
好きだー、甚語楼師匠の落語。楽しい~。


甚語楼師匠「普段の袴」
実は膝を痛めて相引を使ってます、という甚語楼師匠。
釣りをしていて転んで痛めたのだが、早朝だったことやその後GWに突入したこともあって、病院に行くのが遅れて、そのせいで長引いてしまっているとか。
今は30分座っているのが限界。それ以上はできない。先ほどの「愛宕山」はちょうど30分ほど。実は危ないところだった。いまさら言ってもしょうがないですが。
そんなまくらから「普段の袴」。
この、もう一席「軽い噺」のクオリティの高さと楽しさったら。
最初のお殿様に威厳があってかっこいい。それだけにそれを真似する男のがちゃがちゃしているのがおかしい。
大家さんのところに袴を借りに行って「おい、大家、いるか。大家、このやろう!」。
「お前が袴?祝儀、不祝儀か?」
「そうだよ、その祝儀不祝儀だよ!」
「どっちだ?祝儀か?不祝儀か?」
「祝儀不祝儀。両方だよっ!」

道具やで鶴の絵を「文鳥」と言われて「ちがうよー鶴だよ鶴!」。このあっけらかんとした確信の強さに大笑い。
楽しかった~。


白酒師匠「木乃伊取り」
テッパン。飯炊きの清蔵がもう白酒師匠にぴったりで楽しい楽しい。
お酒を飲んで酔っ払って芸者にお世辞を言われて手を触らせてもらって「楽しいっ!!」って叫ぶのがおかしい。
パワーあるなぁ。絶対に笑わせるパワー。おそるべし。

 

世界で一番美しい病気

 

世界で一番美しい病気 (ハルキ文庫)

世界で一番美しい病気 (ハルキ文庫)

 

 ★★★★★

恋におちるたびに、僕はいつもボロボロになってしまう―。作家として、ミュージシャンとして、数々の名作と伝説を残した中島らも。「よこしまな初恋」「性の地動説」「私が一番モテた日」「やさしい男に気をつけろ」「サヨナラにサヨナラ」ほか、恋愛にまつわるエッセイと詩、小説を収録。初めての文庫化 

 中島らもの恋をテーマにしたエッセイ。笑って泣いて心に沁みる言葉の数々。

 恋におちることは、つまりいつかくる何年の何月かの何日に、自分が世界の半分を引きちぎられる苦痛にたたき込まれるという約束を与えられたことに他ならない。

「想い」とは何の意味もないガラクタであり錯覚であり、それのないところにいれば我々は「傷つかないから幸せ」でいられるのか。

自分で自分の気持ちをきれいに整理できるのであれば誰も苦労はしないわけで。想いというのはほんとにどうしようもないものであるよなぁ…と思う。

絲的ココロエ―――「気の持ちよう」では治せない

 

 ★★★★★

双極性障害Ⅰ型発症から20年。
長年この病とどうつきあってきたか、服薬ゼロになった現在からみた心得を綴る
貴重なエッセイ。
加齢、発達障害、依存、女性性、ハラスメントなどの話題も。 

絃山さんが双極性障害を発症して仕事を辞め、その後作家になったということを初めて知って驚いた。私も鬱病になりかけたことがあるので共感できたし、またとても勉強になった。

精神の病は目に見えないので、心構えだの甘えだの態度だのと言う人は必ず存在するのだが、そんなときには、反論せずに自分にこう言い聞かせることにしている。

「人間は自分の意思では虫歯ひとつ治せません」

周囲の人が心配のあまり一緒に悩んでしまうことは、好ましくない。普段どおりとまではいかなくても、病人と離れる時間、気分転換や遊びの時間はぜひ確保していただきたい。

(中略)

病人にとっては時間が他人と同じように流れていないことがつらいものÑだ。不公平だと思ったりする。

入院前に主治医に言われた言葉を私は今でもよく思い出す。
「医者にできるのは薬を使って援護射撃をすることです。矢面に立つのは患者さん自身です」
(中略)

医者との相性とは「言葉が通じるかどうか」だと思う。

完治は難しいとしても、自分の状態を常にきちんと把握して最悪の状態にならないようにすること。信頼できる医者に出会うこと。身近な人がそういう病気になったら原因や安易な安易な励ましの言葉などかけず、本を読んでまず勉強すること。心の病は気の持ちようではどうにもならないことを知ること。「人間は自分の意思では虫歯ひとつ治せない」の言葉を胸に刻みたい。

あれも凌鶴これも凌鶴 第四回

5/26(日)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴これも凌鶴 第四回」に行ってきた。

・凌鶴 ショート講談
 「テアトル新宿入場」
 「伊勢丹カードマジック」
 「中村裕
 「前田長吉」
 「山内一豊の妻 出世の馬揃え」
・凌天「後藤半四郎」
・凌鶴「糞土師 伊沢正名
~ 仲入り~
・凌天「誉れの使者」
・凌鶴「フレッド・コレマツ」


凌鶴先生 ショート講談
俳優時代に演技の勉強になるだろうと思って一鶴先生の講談教室に行ったという凌鶴先生。そこで教わったのは4分ぐらいで終わるショート講談だった。
一人でできる講談の魅力にとりつかれ、一鶴先生のところに弟子入りして講談師に。
それから自分はショート講談というものを作ってきている。
最初に新作をやったのはレッドペッパーで定期的にやっていた勉強会。
自分がかけた一席が短すぎたので何かもう少し…と思い、その日新聞で読んだ「侍マン」のことを高座でかけてみたら、それまで眠そうだったお客さんの目が輝いた!それを見て「これだ」と思って、以来新作を作り続けている。
今日はそんな新作講談をいくつか紹介します、と。

凌鶴先生がチケットショップで買ったチケットを手にテアトル新宿を訪れる「テアトル新宿入場」。
奥様に何回かカバンを買ってあげたことがあるのだが、伊勢丹で買うとなぜかそれが奥様の記憶の中で「自分で買った」という記憶にすり替わってしまう謎に迫る「伊勢丹カードマジック」。
小さなエピソードだけど凌鶴先生の人柄がにじみ出ていて好きだな。
中村裕」「前田長吉」は、できればロングバージョンで聞きたい。
山内一豊の妻」は以前聞いたことがある話だけど、こんなに短くもできるんだ!と驚きがあった。

凌鶴先生「糞土師 伊沢正名
これがもう抱腹絶倒で最初から最後まで肩がふるえっぱなしだった。
キノコなどの自然写真家で野糞をし続け自らのことを「糞土師」と名乗る 伊沢正名さん。
凌鶴先生の口から「野糞」という単語が出て来た時は、「え?何かの聞き間違い?」と思ったけれど、これはほんとに新年を持ってに野糞をし続けている男性の実話なのである。
初めてした時の様子、それから徐々に技を磨いていく様、そして自分の野糞率の克明な記録。
最初のうちは紙で拭いてそれも一緒に埋めていたが、ある時紙がバクテリアで分解されないことを目の当たりにしてそれからは紙を使うのをやめて葉っぱを使うようになり、それもどの葉っぱが適しているかを分析…その葉っぱの名前を講談調に列挙したり、言葉遊び(ダジャレ)がちょいちょい入っていたりで、おかしくておかしくて笑っていたんだけど、最後まで聞くとそれまで笑っていた自分を反省してちょっと真顔に…。
そもそも排泄行為は表立って語ることではないという「常識」が自分にあるから、こんな風に笑ってしまうんだよな…。
震災の時、水洗トイレを流せないというのがすごく大変なことで、自分たちが見たくないものを見ないためにずいぶん無駄なことをしているものよのう…と思ったことも思い出されたりして。とはいっても野糞はなぁ…。うーん。


凌鶴先生「フレッド・コレマツ」
第二次世界大戦の時に家族ともに収容所に入れられ、そのことを不当として裁判を起こした日系二世フレッド・コレマツの物語。
あーーこれは辛い話だなぁ。
前に読んだ「屋根裏の仏さま」を思い出す。
どこの国でも差別はあって、それが戦争となるとあからさまになる。
そういう差別がおかしいこと、不当であることはわかっているはずなのに、「愛国心」という名のもとに国ぐるみで人種による差別を行い家や財産を奪い収容所に閉じ込める。
外国に移り住むというのはそういう危険が伴うということなのか。
いや自国の中にいても差別はあるし、戦争になればやはり「愛国心」を盾に、密告や投獄、拷問なども行われるのだ。

10年以上前であれば「そういう時代もあったんだなぁ」と聞けたかもしれないが、今聞くともうとても対岸の火事には思えず暗澹たる気持ちになってしまった。
折しもトランプ大統領が来日しており、それもあってこの話を選ばれたようだけど、聞いていてしんどかった。でも目をそらしてはいけないことだとも感じた。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり)

 

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり)

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり)

 

 ★★★★★

痛くて、おかしくて、悲しくて、愛しい。50人のドラマが、あやとりのように絡まり合う。韓国文学をリードする若手作家による、めくるめく連作短編小説集。 

 読み始めてすぐに好き好き!これすごくいい!!と思って、図書館本だったんだけど昼休みに本屋さんに行って購入。同じ本を二冊抱えて家に帰ってくることになった。

韓国の首都圏の大学病院の周辺に住む51人の物語。

事故で大切な人が重体になっていたり、恋人にふられて絶望したり…暮らしのレベルや抱える問題はそれぞれ。
誰もが自分の物語の中では主役なんだなぁ。同じ人が他の人の物語にひょいと現れると印象がまた違ってその人の別の一面も見られるという作りも巧み。

なによりも作者のまなざしが優しくユーモアに満ちていて読みながら何度も声を出して笑ったり泣いたり。

パワハラや欠陥工事、劣悪な労働環境などままならないことが沢山あるけれど少しずつでも良い方向に繋いで行けたらいい。素晴らしい作品。大好きだ。

国同士にいざこざがあってもそこに暮らす人たちは私たちと何ら変わるところはない。善意にあふれた人がたくさんいて葛藤しながら一生懸命生きてる。
反韓の人にこそ読んでもらいたいと思うけれど、そういう人はこういう本を手に取ることもしないんだろうな、と思うと悲しくなる。

青空と逃げる

 

青空と逃げる (単行本)

青空と逃げる (単行本)

 

 ★★★★

深夜の交通事故から幕を開けた、家族の危機。押し寄せる悪意と興味本位の追及に日常を奪われた母と息子は、東京から逃げることを決めた――。

辻村深月が贈る、一家の再生の物語。読売新聞好評連載、待望の単行本化。

ストーリー的には、え?どうなの?と思うところはあったけど(妻子逃げる必要あった?夫どうなん?え?連絡取れるの?それ黙ってたの?はぁ?)、母と息子が逃亡生活の中で成長し絆を深める描写がとても良かった。

見知らぬ土地で生活すること、足場を固めること、信頼を得ること、どうしようもなくなったら助けを求めること。

行った先々の土地が魅力的でロードノベルの魅力たっぷり。
出会った人たちの距離感を保った優しさが心に染みた。

聖者が街にやって来た

 

聖者が街にやって来た

聖者が街にやって来た

 

 ★★

企業誘致に成功し、タワーマンションも林立して人口が急増する神奈川県多摩川市湧新地区で、小谷桜子は古くから花屋を営んでいる。十七歳の娘・菫子が市民の結束を目的に企画されたミュージカルの演者に選ばれた。新旧の住民が入り交じり盛り上がっていく街。だが、水を差すかのように若い女性が立て続けに殺される。それぞれの遺体近くには異なる花びらが一片だけ、なぜか残されていた。犯人が捕まらず、謎も不明なまま、街に不穏な空気が満ちるなか、今度は菫子が何者かに誘拐されてしまう。格差、母子家庭、LGBT、子どもの貧困、タワマン、危険ドラッグ…。ニッポンの“今”を鋭く照らす傑作長編!

前回読んだ「少女たちは夜歩く」がとても良かったのでそれに比べると少し物足りない。

前向きで屈託のない女子高生、ハンサムで頭はいいけど裏のある男子、人情に厚いオカマちゃん、熱血な刑事、天才的な才能に恵まれ奔放なピアニスト、と人物があまりにもステレオタイプ過ぎやしないか。

動機もなんかあまりにもありふれているし、全体的に下町っぽい優しさに包まれているのでスカッとした後味だけど冷静に考えたらかなり酷い話だぜ、おい。
読みやすくて一気読みしたけど、あんまり頭に残ってない。あ、幻冬舎なんだ。ふっ。

クネレルのサマーキャンプ

 

クネレルのサマーキャンプ

クネレルのサマーキャンプ

 

 ★★★★★

自殺者だけが集まる世界でかつての恋人を探すハイムは、親友アリとヒッチハイカーの美女リヒとともに旅に出る。やがて行き着いたのは「意味のない奇跡」に満ちたサマーキャンプだった…。中篇代表作のほか、かつて月に住んでいた人々、作家の才能を奪いにくる悪霊、付き合った女性たちの写真をある家で発見する男、きらきら光るものが好きな女の子、バスに乗り遅れた客にドアを開けない運転手、美術館に飾られた美しい子宮、地獄から湧きでる人々など、意表をつく設定で人間の本質をとらえた数多の物語を紡ぎだすイスラエル人作家の日本語版オリジナル作品集。人気作家の31の中短篇。

表題作が中篇で、それ以外はかなり短めの短編が収められている。

「クネレルのサマーキャンプ」
自殺した者だけが行き着く世界で元カノを探す男。この世界で家族で暮らしてる男(つまり家族全員自殺している)。そして何かの手違いで来てしまった美女。旅に出た三人がたどり着いたのは意味のない奇跡に溢れたサマーキャンプ。

自殺したあともこんな「ふつう」の世界に行くのなら、生きていても変わりがない?なんて思ってしまうけど、それだけ現世が生き難いということなのか。「兵役」までは「(自殺しないで)もった」というような記述もあって、そうか…戦争だ…とはっとする。
ぶっ飛んでいるけど不思議な優しさに満ちている。でも油断してると奈落に落とされるような危うさもある。

前作よりもバラエティーに富んでる作品群。

表題作の他は「君の男」「でぶっちょ」「地獄の滴り」が好き。一瞬で世界が逆転する面白さが独特。

色ざんげ

 

色ざんげ (岩波文庫)

色ざんげ (岩波文庫)

 

 ★★★★★

欧州から帰朝した洋画家湯浅譲二は、毎日手紙を寄越す不思議な女に翻弄されるうちに、女は失踪。女の友人つゆ子と捜索の旅に出た彼はつゆ子に魅かれるが、さらに湯浅の絵のファンだという女学生が現れ……。深く誰か一人を愛するわけではない男と、男の愛を?んだようで常に不安な女の姿を情感豊かに描く。(解説=尾形明子・山田詠美)

昨年読んだ「文豪たちの友情」で、梶井基次郎宇野千代の関係について触れられていて、二人の仲を尋ねられた宇野千代が「顔が好みじゃない」と否定したが、実は恋愛関係があったのかもしれない。恋多き女宇野千代が梶井のことを守ろうとしてそう答えたのかもしれない、というような話。
それを読んで、そういえば一時期「恋多き女」としてよくテレビに出ていた宇野千代の作品を一度も読んだことがなかったなと思って、読んでみた。

画家・東郷青児をモデルに彼と関係を持つ三人の女が描かれる。言い寄られればふらふらと関係を持ち、その友人の方が美人だと思えば今度は自分から言い寄り…駆け落ち、重婚、心中と、主人公の譲二の行動は恋愛に生きる男そのものなのだが、不思議と熱が感じられない。
女の側の熱情や思惑にただ流されているようなのだが、時々激情に駈られて無分別な行動に走る。

彼の虚無感が女から愛情を男からは同情を引き寄せるのか。
身勝手な男だが哀れでもあるし羨ましくもある。こういう生き方がまかり通った時代だったのだなと思うと、今の方がずっと不自由に感じる。
色ざんげ」というタイトルも秀逸。

勢いのある美しい文章。ほかの作品も読んでみたい。

玉川太福 ”男はつらいよ 全作浪曲化に挑戦” 第6回

5/20(月)、日本橋社会教育会館で行われた「玉川太福 ”男はつらいよ 全作浪曲化に挑戦” 第6回」に行ってきた。

・太福・みね子「男はつらいよ 第一作」(大西信行作) 
~仲入り~
・太福・みね子「男はつらいよ 第十作・寅次郎夢枕」

太福さん「男はつらいよ 第一作」(大西信行作)
最近、地方のお仕事もいただけるようになって飛行機に乗る機会が増えたという太福さん。
飛行機好きの噺家の方たちから「マイル貯めたらいいよ」とアドバイスをいただき、貯めようとしているところ…。まだ貯めれてません。ちょっと難しくて…。
昨日も飛行機で帰って来たんですけど、飛行機って非日常ですよね。何がと言えばCAさん。いいですよね。見ていてもいいんですから。合法的に見ていられるっていう幸せ…。

…太福さんがそう言うと、みね子師匠が「え?なに言い出すの?」とちょっと驚いた顔をしてから、ぷっと吹き出したのがすごくかわいい…。

ちょっと引くぐらい…男子中学生みたいなのがもう最高だな、太福さん。
またそういう話を聞きながらみね子師匠がちょこっと眉を上げて、ぷぷっと微笑むのがたまらなくかわいらしいし、この二人の関係がとても素敵で、ほんとにいいなぁと思ってしまった。

寅さんをやるのは、中高校生の時に女の子と口もきけなかった、そういう人間じゃなきゃだめ。
そういう意味では僕にはその資格ありです。
そんなまくらから「男はつらいよ 第一作」。これは太福さんが作ったわけではなく、寅さん映画が流行っていたころに浪曲化されたものとのこと。まさに寅さん登場の回だ。

寅さんが20年ぶりに柴又に帰って来たところから。
寅さんが御前様に気が付いてぺこぺこと丁重に挨拶するところで、ああっ笠智衆だ!と思い出した。
私は子どもの頃、よくおばあちゃんと二人で寅さんの映画を見に行ったものだった…(遠い目)。
御前様の娘・冬子に久しぶりに再会し美しくなっていたことに感激し恋心を抱く。この再会の場面で冬子が「あら、寅ちゃん。ひさしぶりね。はい、飴あげる。」と言ったのがもう最高で大笑い!このセンスったら。
さくらの夫の前田吟が妙にしっくりきていたり、たこ社長がちょっと自信なさげだったりするのも面白い。
わーーー、寅さんと浪曲ってすごい相性がいいんだなぁ。楽しかった。

太福さん「男はつらいよ 第十作・寅次郎夢枕」
第十作はちょっと普段とは違うパターンで異色です、と太福さん。マドンナは八千草薫さん。

柴又に帰って来た寅さん。歓迎してくれるはずのおばさんやさくらの様子がおかしいと思っていると、実は二階には御前様の親戚で大学助教授の岡倉が居候していると聞かされる。
気を悪くした寅さんが出ていこうとすると、そこで幼馴染の千代にばったり出会う。
離婚して柴又に戻ってきて美容院をしている千代に会った寅さんはそのまま柴又に残ることにする。

離れ離れになった子供に会わせてもらえない寂しさを語る千代を慰めて元気を出させようとする寅さんに、千代は徐々に心を寄せるようになる。
また美しい千代に岡倉が片思いし、それを知った寅さんは岡倉を応援する。

千代と二人で出かけた帰り道、千代の想いを知った寅さんは…。

聞いていて思い出した。
私はこの第十話を見て、寅さんのことが大好きになったんだった。
いつも勝手に片思いをして玉砕する寅さんが、初めて相手から思われていることを知ったときの不器用さ、やさしさ…。

それが太福さんにとても合っていて、思わず涙涙。
うおおーーー、いいーーー。
かっこいいところとばかばかしいところのさじ加減も絶妙でほんとに素敵だった。
太福さんの男はつらいよシリーズ、もっと見たくなったぞー。