りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

あれも凌鶴これも凌鶴 第四回

5/26(日)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴これも凌鶴 第四回」に行ってきた。

・凌鶴 ショート講談
 「テアトル新宿入場」
 「伊勢丹カードマジック」
 「中村裕
 「前田長吉」
 「山内一豊の妻 出世の馬揃え」
・凌天「後藤半四郎」
・凌鶴「糞土師 伊沢正名
~ 仲入り~
・凌天「誉れの使者」
・凌鶴「フレッド・コレマツ」


凌鶴先生 ショート講談
俳優時代に演技の勉強になるだろうと思って一鶴先生の講談教室に行ったという凌鶴先生。そこで教わったのは4分ぐらいで終わるショート講談だった。
一人でできる講談の魅力にとりつかれ、一鶴先生のところに弟子入りして講談師に。
それから自分はショート講談というものを作ってきている。
最初に新作をやったのはレッドペッパーで定期的にやっていた勉強会。
自分がかけた一席が短すぎたので何かもう少し…と思い、その日新聞で読んだ「侍マン」のことを高座でかけてみたら、それまで眠そうだったお客さんの目が輝いた!それを見て「これだ」と思って、以来新作を作り続けている。
今日はそんな新作講談をいくつか紹介します、と。

凌鶴先生がチケットショップで買ったチケットを手にテアトル新宿を訪れる「テアトル新宿入場」。
奥様に何回かカバンを買ってあげたことがあるのだが、伊勢丹で買うとなぜかそれが奥様の記憶の中で「自分で買った」という記憶にすり替わってしまう謎に迫る「伊勢丹カードマジック」。
小さなエピソードだけど凌鶴先生の人柄がにじみ出ていて好きだな。
中村裕」「前田長吉」は、できればロングバージョンで聞きたい。
山内一豊の妻」は以前聞いたことがある話だけど、こんなに短くもできるんだ!と驚きがあった。

凌鶴先生「糞土師 伊沢正名
これがもう抱腹絶倒で最初から最後まで肩がふるえっぱなしだった。
キノコなどの自然写真家で野糞をし続け自らのことを「糞土師」と名乗る 伊沢正名さん。
凌鶴先生の口から「野糞」という単語が出て来た時は、「え?何かの聞き間違い?」と思ったけれど、これはほんとに新年を持ってに野糞をし続けている男性の実話なのである。
初めてした時の様子、それから徐々に技を磨いていく様、そして自分の野糞率の克明な記録。
最初のうちは紙で拭いてそれも一緒に埋めていたが、ある時紙がバクテリアで分解されないことを目の当たりにしてそれからは紙を使うのをやめて葉っぱを使うようになり、それもどの葉っぱが適しているかを分析…その葉っぱの名前を講談調に列挙したり、言葉遊び(ダジャレ)がちょいちょい入っていたりで、おかしくておかしくて笑っていたんだけど、最後まで聞くとそれまで笑っていた自分を反省してちょっと真顔に…。
そもそも排泄行為は表立って語ることではないという「常識」が自分にあるから、こんな風に笑ってしまうんだよな…。
震災の時、水洗トイレを流せないというのがすごく大変なことで、自分たちが見たくないものを見ないためにずいぶん無駄なことをしているものよのう…と思ったことも思い出されたりして。とはいっても野糞はなぁ…。うーん。


凌鶴先生「フレッド・コレマツ」
第二次世界大戦の時に家族ともに収容所に入れられ、そのことを不当として裁判を起こした日系二世フレッド・コレマツの物語。
あーーこれは辛い話だなぁ。
前に読んだ「屋根裏の仏さま」を思い出す。
どこの国でも差別はあって、それが戦争となるとあからさまになる。
そういう差別がおかしいこと、不当であることはわかっているはずなのに、「愛国心」という名のもとに国ぐるみで人種による差別を行い家や財産を奪い収容所に閉じ込める。
外国に移り住むというのはそういう危険が伴うということなのか。
いや自国の中にいても差別はあるし、戦争になればやはり「愛国心」を盾に、密告や投獄、拷問なども行われるのだ。

10年以上前であれば「そういう時代もあったんだなぁ」と聞けたかもしれないが、今聞くともうとても対岸の火事には思えず暗澹たる気持ちになってしまった。
折しもトランプ大統領が来日しており、それもあってこの話を選ばれたようだけど、聞いていてしんどかった。でも目をそらしてはいけないことだとも感じた。