りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場3月中席昼の部

3/19(日)、池袋演芸場3月中席昼の部に行ってきた。


・市朗「子ほめ」
・さん若「権助魚」
・たけ平「宗論」
・アサダ二世 マジック
・さん助「花見酒」
木久蔵「こうもり」
ホンキートンク 漫才
歌笑「親子酒」
・菊千代「金明竹
・小円歌 三味線漫談
・志ん輔「七段目」
~仲入り~
・小のぶ「粗忽長屋
・正楽 紙切り
・左龍「片棒」


さん若さん「権助魚」
満員のお客さんに向けてたっぷりの「権助魚」。顔芸が以前より激しくなっていた(笑)。


アサダ二世先生 マジック
ちゃんとやらないこと山の如し。寄席になれたお客さんばかりだと「いつものね」とそれも受け入れる雰囲気になるけど、この日のように初めてのお客さんが大半を占めていると「え?なに?」「ほんとにできないんだ?」とビミョーな空気に…。


さん助師匠「花見酒」
ハイテンションでばかばかしく。お釣りに用意した25銭が兄貴分と弟分の間を行ったり来たり。ベロンベロン加減に笑った~。


木久蔵師匠「こうもり」
なんか最近ちょっと好きになってきた…。


小のぶ師匠「粗忽長屋
この日のピュアなお客さんが小のぶ師匠の噺に引き込まれてどっかんどっかんウケていた。結構この噺って「え?」っていう反応のことも多いのにすごい。
せっかちな粗忽者の方の堂々とした勘違いぶりと、くまさんの「どうもすいません。私夕べここで倒れちゃってたそうで」というのんびりした勘違いぶりがほんとに楽しい。
面倒を見てるおじさんの「ああ、また同じようなのがもう一人来ちゃったよ」の嘆きがしみじみおかしくて、もうほんとにいやというほど見ている噺なのに大笑いしちゃった。

 

正楽師匠 紙切り
この日は三三師匠が来なかったので、正楽師匠がたっぷりの紙切り。それはそれでレアで楽しい。
注文で切ったあとに、先代の小さん師匠を切ったんだけど、これがすごく感じが出ていて素敵だったなぁ。


左龍師匠「片棒」
山車の人形のおかしさったら!
笑った笑った。

雷門小助六独演会

3/18(土)、プーク人形劇場5階で行われた「雷門助六独演会」に行ってきた。

・たたじゅん 獅子舞
・小助六「七度狐」
・松本優子 寄席囃子
・小助六「百年目」

 

たたじゅんさん 獅子舞
かわら版でこの会のことを知り、予約の電話をした時に出られたのがおそらくたたじゅんさんご本人。とても感じが良くてもうそれだけでこの会がとても楽しみなものに。
電話で「5階まで階段で上がっていただきます」と申し訳なさそうに言われたので覚悟して会場に向かうと入り口のところに立ってらしたのがたたじゅんさんで「ここから上がっていだたきます」と送っていただいたと思ったら「受付も私がやらないといけないので。どうぞごゆっくり上がってらしてください」とまた5階まで上がって行かれた。

手作り感いっぱいの会場に、たたじゅんさんによる獅子舞。客席をまわって一人ずつ噛んでいただいて、なんかもうおめでたい気持ちでいっぱい!素敵。


助六師匠「七度狐」
たたじゅんさんとは学校で落語を教えるワークショップのようなもので知り合いに。
行き始めた当時は学校?と違和感を感じてもいたけれど、今はもうそういうのもなくなって慣れたもの。
この日のお客さんも普段寄席に通っているような方たちばかりではなかったので、学校でやるような落語講座。うーん。教え方がとっても上手。

そしてそんなまくらから「七度狐」。
なんとこの日は小さな会場の隅に屏風のようなものが置いてあって演者さんはそこに控えてらっしゃったんだけど、お囃子の松本さんがいらしていて、生演奏。
この間、日暮里サニーホールで聞いたのと同じ、鳴り物入りの「七度狐」。
噺だけでも楽しいのに、三味線が入るとよりにぎやかで楽しい!


松本優子さん 寄席囃子
この間の日暮里サニーホールの時も思ったけど、ほんとに楽しそうに三味線を弾かれるので、見ていてこちらも楽しくてにこにこしてしまう。
歌も伸びやかでほんとに素敵。


助六師匠「百年目」
まくらで「お、きっとこれは」と思った通りに「百年目」。
この間聞いたばかりだったんだけど、この間は泣かなかったのに今回は泣いてしまった…。
「昨夜は眠れたかい?私は眠れなかった。申し訳ないが帳面を改めさせてもらったよ」と言う大旦那の気持ちに、胸をうたれたのだった。

連雀亭ワンコイン寄席

3/18(土)、連雀亭ワンコイン寄席に行ってきた。


・小はぜ「巌流島」
・遊里「まんじゅうこわい
・夏丸「橘ノ圓物語」


小はぜさん「巌流島
若侍は声が大きくていかにも血気盛んでえばってる。
屑屋を庇う老人の侍は冷静で品がいい。
商売っ気を起こして余計なことをしてしまう屑屋さんに、その姿を見てヤイヤイ言ってる江戸っ子たち。
人物がくっきりと描かれているので、舟の上の様子が頭に浮かんできて楽しい~。

安全とわかった途端に大きな声で啖呵を切る江戸っ子もおかしい。「このやろう」の巻き舌には笑った~。
久しぶりの小はぜさん(小三治師匠の会の前方では見たけど)。すごく楽しかった。


遊里さん「まんじゅうこわい
花粉症になった話やヘリコプターに乗った話や秋田の救護ヘリの名前が「なまはげ」という話など、たっぷりのまくらのあとに「まんじゅうこわい」。
テンポが良くてハイテンションで楽しかった。


夏丸さん「橘ノ圓物語」
噺家には二つの特徴がある。一つ目は嘘つき。とにかくウケたいので話を盛る。もう一つの特徴はみんなおしゃべり。
だから楽屋で自分がした面白い話が、尾ひれがついてまるでスケールが違う話になって次に行った時に人から聞かされる、なんてこともある。

嘘つきといえば圓師匠。この師匠はとにかく話を盛るのでどこまでがほんとでどこまでが嘘かわからない。
この圓師匠に付いて師匠の故郷での独演会に行った話と、師匠に稽古をつけてもらいにお宅に伺ってそのあと師匠の家でやってる居酒屋でカラオケを歌った話。
これがほんとに話としても面白いし、なによりも圓師匠の人柄が伝わってきてじーん…。

うおおお。こんな噺も作れてしまう夏丸さんってすごい。じんわりとよかった~。

これでワンコインなんてほんとに申し訳ない!

第三回マゴデシ寄席

3/17(金)、お江戸広小路亭で行われた「第三回マゴデシ寄席」に行ってきた。


・語楼「子ほめ」
・かしめ「元犬」
・吉笑「一人相撲」
・談吉「当たりの桃太郎」
・笑二「親子酒」
・こしら「夢の酒」


かしめさん「元犬」
こしら師匠の独演会で初めて仮面女子さんを見た時は「うへぇ。こんな落語をこれからもこの会に行くと聞かなきゃいけないのか」と思ったものだが(申し訳ない!)、なんか驚くほど面白くなっていてびっくり!
声の出し方も全然変わって堂々として聞きやすいし、落語っぽくなってる(笑)。
こしら師匠のお弟子さんらしく、あちこち手を加えているんだけど、それも面白い。
ほーーー。


吉笑さん「一人相撲」
マゴデシ寄席の情報を立川流のホームページの方に置かせてもらっていたんだけど、それがいきなり削除されてしまった。今別の場所でドメインをとったので1週間ぐらいでそちらに移します。

おお。さすが吉笑さん。このフットワークの軽さがすばらしい。
こういう人はおそらく同じ組織にいたり年がちょっと近かったりすると目障りに思われたりもするのだろうが、私は好きだ。
計算高いところと同時に「こうやったらもっと効率はいいんだろうけどそっちは選びたくない」という頑なさがあって、そこが好きだな。
ただただガンバレと思う。

「一人相撲」、前に見た時よりもコンパクトに、よりわかりやすくなっていた。
この理屈のこねくり回し方がいかにも吉笑さんだなと思うし好き。


談吉さん「当たりの桃太郎」
おお、談吉さんの新作を生で見るのは初めて。前にテレビで女の人が「そうね」って何度もいう新作を見た時も思ったけど…シュールだなぁ…。
談吉さんってとってもデリケートそうな感じがするけど、その一方で結構心が強いんじゃないか。そんな気がする。

誰もが知ってる昔話のパロディ。繰り返しの面白さとシュールな展開。独特。


こしら師匠「夢の酒」
次回のトークライブには呼んでもらえなかったこしら師匠。吉笑さんに「俺も出たい」と直談判したけど「いや兄さんはちょっと…」と断られた。「ちょっと」って!!て叫ぶこしら師匠がおかしい~。
「あの立川流ドメインは俺がとったんだかんね!あ、この話よりさがみはらの話のほうがいい?」。
ぶわははは。もうどんなことを言いだすかわからないから、きっと吉笑さんも呼べないんだよー。
でも案外ちゃんとしてるから大丈夫!…だと、思うよ?(南なん師匠風味)

そんなまくらから「夢の酒」。
これがもうこしらワールド全開でめちゃくちゃおかしい。
夢の話を聞きたがる奥さん。若旦那が見た夢の話を始めたとたん「雨ってどんな雨?どんなだった?どんなだった?」「…どんなって…お前何を知りたがってるんだよ」。
騒ぎを聞きつけて駆け付けた大旦那が若旦那に向かって「だからお前…メンヘラだけはやめておけって言ったじゃないか。顔とか家柄とかそんなのはどうでもいいから、メンヘラはだめ!」。

大旦那が夢の中に入っていったあとも、せっかく夢なんだから誰かを殴りたいなぁ、でも知ってる人はいやだな、こう世の中のためになってないやつがいい、って言ってると、「あーー働きたくねぇーねみぃー」と言ってる男が。こいつだ!と殴りかかると「あ、全然手ごたえがない。あーーだめなやつか。だめなのか。殴っても。そっちか」。

ああ、やっぱりこしら師匠は破壊的に面白い。すごいわ。

 

吸血鬼

 

吸血鬼

吸血鬼

 

 ★★★★★

  独立蜂起の火種が燻る、十九世紀ポーランド。その田舎村に赴任する新任役人のヘルマン・ゲスラーとその美しき妻・エルザ。赴任したばかりの村で次々に起こる、村人の怪死とその凶兆を祓うべく行われる陰惨な因習。怪異の霧に蠢くものとは―。

 

最初から何か恐ろしいことが起こりそうな不吉な予感に満ちていて、その正体がなんなのか、ドキドキしながら読み進める。

村の土地の大半を所有する元詩人クフルスキとその妻。可愛らしい妻を連れてこの地に赴任してきたオーストリア帝国の行政官ゲスラーは文学を愛し村の人にも公正であろうとする善人。

貧しすぎる村で変死を遂げる子ども、妊婦、そして美しい女中。
昔パニックを起こした村人たちが村を焼き払ったこともあると聞かされていたゲスラーは、彼らの恐怖心を静めるために、自分が最も軽蔑していた野蛮な風習を復活させることを決意し…。


ゲスラーが宿屋で会話した青年の声。不可視な存在が自分の信念や常識を脅かしていく恐怖はとてもリアルで苦い。
何が正義なのか、何を守ればいいのか、吸血鬼とはいったい何者なのか。

翻訳本のようでもあり、非常に日本的なようでもあり。
2016年のtwitter文学賞がこれっていうのも渋い。

三笑亭可龍十番勝負~第六番勝負は雷門小助六さんと~

3/16(木)、道楽亭で行われた「三笑亭可龍十番勝負~第六番勝負は雷門小助六さんと~」に行ってきた。
前から寄席で見ていて、会に行ってみたいなと思っていた可龍師匠。大好きな小助六師匠をゲストに招いて二人で二席ずつとあったので、これは行くしかない!と小助六師匠ファンのお友だちを誘って行ってみた。

 

・可龍「宮戸川(上)」
・小助六「百年目」
~仲入り~
・小助六「擬宝珠」
・可龍「片棒」


可龍師匠「宮戸川(上)」
ここに来るとき、銀座線で着物を着た男性二人と同じ車両でした、と可龍師匠。
一人はお茶の先生?みたいな雰囲気だったんだけど、もう一人がどう見ても堅気じゃない。といって噺家っぽくもない。
黒い着物に赤い羽織。しかもその赤がラメが入っていてキラキラしてる。羽織紐にはビーズが付いていてキラキラ。
これはいったい何者だろう??と思っていたら…その人たちとこのあたりまで一緒でした…。

道楽亭があるのは新宿2丁目。
ということはおそらくそこのお店のおにいさん?
さすが、可龍師匠。普通に会に来るだけでそんな面白い目にあえるなんて(笑)。

そんなまくらから「宮戸川(上)」。
お花ちゃんがいかにも可龍師匠らしくちょっと蓮っ葉で現代的な感じ。面白いけど正直あんまり好きじゃない、かなぁ。この噺自体が、ね…。
でも途中に圓丸師匠の物まねがちらりと入ったのがもうツボで。本当にそっくりだった!


助六師匠「百年目」
同期と紹介された小助六師匠。同期と言っても自分が入った時、可龍師匠はたて前座で自分はお茶くみ、一番のぺーぺー。正直あのころは兄さんが怖かった。
でもいざ自分がたて前座になってみると、確かにお茶くみの子たちっていうのは気が利かなくて動かすのが大変で、ああ、あの時兄さんはこういう風に自分のことを見ていたのか、ってわかりました。

そんなまくらから「百年目」。
店の若い者たちにガミガミ言って、迎えに来た一八を邪険にして、舟の上でも障子をしめろ!見つかったらどうする!と周りの目を気にして、だけどお酒を飲んだら気が大きくなってはしゃいで鬼ごっこ。
そんな番頭さんが小助六師匠に重なって見える。
大旦那に見つかってから番頭さんが部屋で着物を脱いだり着たりするのもすごくリアルででもなんかとってもおかしいし、笑いどころもたっぷりあってすごく楽しい。

うわーーー。なんかすっごくいい!
この噺って若い人がやるとなんかちょっと背伸びしている感があるんだけど、小助六師匠には全くそれがなくて、番頭さんもチャーミングだし、大旦那もユーモアがあっていかにも大店の大旦那らしくて…かといって泣かせるぞーというところもなくあっさりしていて、だけど大旦那に受け入れてもらえた嬉しさも伝わってきて、じーん…。感動。


助六師匠「擬宝珠」
猫好きで知られる小助六師匠だけど、実はちょっと猫アレルギーがあって…というのは知らなかった。
家でも猫にデレデレじゃなくツンデレっぽく接しているっていうのが、いかにもキャラに合っていておかしい。
そんなまくらから「擬宝珠」。「擬宝珠」といえば、喬太郎師匠と文治師匠でしか見たことがないんだけど、くまが若旦那を見舞うところで「え?女の子のことじゃない?ってことは崇徳院じゃないな」、「え?みかんでもない?じゃ千両みかんでもないのか」というのが、落語おたくの小助六師匠にぴったりでおかしい!

前半がたっぷりだったからごくあっさりした「擬宝珠」だったけど、テンポがよくて展開も早くて楽しかった。


可龍師匠「片棒」
あの「擬宝珠」っていうのは芸協だと他には文治師匠ぐらいしかやってなくて、小助六さんが持ってるってことはネタ帳で見て知ってたんですけど見たのは今日が初めてで…。驚きました。文治師匠がやるとあんなに気持ちの悪い噺が、小助六さんがやると全然気持ち悪くないっていうのに。こんな噺でもきれいなんですね。

ぶわははは!そういえば前に見た文治師匠の「擬宝珠」はとても長くて、確かになんか気持ち悪かった(笑)。

自分は小学生のころから落語が好きで落語番組をテープに録って集めるみたいな子だったから、一番の趣味を仕事にしてしまって趣味がなくなってしまった。こういう世界に入ったせいか、逆に趣味は和じゃないほうに惹かれるようになって、一時期ロイヤルコペンハーゲンのカップを集めたりしてました。

…に、思わずぶわはっ!と吹き出すと、「そこ、笑うところですか?」と言われちゃった。すすすみません。でもなんかやっぱり面白い、可龍師匠がロイヤルコペンハーゲンを集めてるって。
寄席で見ていて、なんか気になるなぁ、いったいどんな人なんだろう、自分の会だときっともっと自分のことを話してる気がするから見に行ってみたいなぁと思って来たんだけど、そんな自分をほめてあげたい。ほら、やっぱり面白い!って。
あー楽しい。

そんなまくらから「片棒」。
これがほんとに楽しかった。特に銀さんの笛や太鼓のリズム感が抜群で楽しい!
そしてしゅっとしていてきれいな芸を目指していると言いながら、時々ひょいっとすごく現代的なクスグリが入るんだな。え?そこ?みたいな。そこに攻撃性を感じてちょっとどきっとする。

楽しかった~。

ポーランドのボクサー

 

ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)

ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)

 

 ★★★★

69752。ポーランド生まれの祖父の左腕には、色褪せた緑の5桁の数字があった―アウシュヴィッツを生き延び、戦後グアテマラにたどり着いた祖父の物語の謎をめぐる表題作ほか、異色の連作12篇。ラテンアメリカ文学の新世代として国際的な注目を集めるグアテマラ出身の鬼才、初の日本オリジナル短篇集。  

 短編なのか長編なのかも分からずに読み始めたのだが、途中から主人公が作者と同姓同名であることと短編同士がつながっていることに気が付いた。

ポーランドに生まれた祖父がアウシュヴィッツポーランドのボクサーと出会い、裁判の時に言うべきこと言ってはいけないことを教わり、それにより銃殺されずに済んだ。アウシュヴィッツにいたことを隠し続けていた祖父が死ぬ間際になって主人公エドゥアルドに真実を語る。

民族や宗教の呪縛から逃れようとしながらもそこを避けては通れない。
ユダヤ系として生まれたエドゥアルドは、ユダヤ人であるということを意識しないではいられないのだが、しかし正統派ユダヤ教徒と結婚することになりガチガチの宗教心を見せつける妹には反発を覚えずにはいられない。
民族からは逃れられないのに、その中にどっぷり浸ることもできない自分。自分はいったい何者なのか、苦悩するエドゥアルドは作者自身でもあるのだろう。

そんなエドゥアルドは旅先で出会ったジプシーの血を引くピアニストであるミランに魅了される。
世界を渡り歩くミランから次々と届く絵葉書。最後に届いた一枚を頼りにミランを探してベオグラードを訪れたエドゥアルドは、ジプシーにもセルビア人にもなりきれないミランに自分自身の姿を重ねていく。

苦い物語が多く読んでいて気持ちが沈んでくるのだが、最終話の主人公の語りに少しだけ救われた気がする。

末廣亭3月中席昼の部

3/11(土)、末廣亭3月中席昼の部に行ってきた。


・小多け「道灌」
・歌太郎「やかん」
・夢葉 マジック
・海舟「熊の皮」
・喬之助「初天神
・ひびきわたる 漫談
・琴調「来豆腐
・吉窓「大安売り」
・小菊 粋曲
・はん治「妻の旅行」
・錦平「紀州
・正楽 紙切り
・小満ん「宮戸川(上)」
~仲入り~
・菊志ん「あくび指南」
・一風・千風 漫才
・小ゑん「ぐつぐつ」
・小はん「親子酒」
・ストレート松浦 ジャグリング
・小里ん「五人廻し」


歌太郎さん「やかん」
明るくて声が大きくて勢いがあって、ざわざわした客席をぐいっと高座にひきつけたのはさすがだなぁ。
「やかん」も前の日に見たのとはうってかわってスピードがあって緩急もあって楽しかった。センスを感じる。好き。


喬之助師匠「初天神
明るくて軽くて大好きな師匠。学校寄席のまくらも楽しかったけど、子どものだだのこね方がとってもありがちでおかしい。いるいるこういう子!


ひびきわたる先生 漫談
キセルも微妙だったけど、そのキセルをやめて漫談だけっていうのも…。


琴調先生「来豆腐
とてもよかった。これぐらいの浅い出番で琴調先生の「来豆腐」を聴けるなんて幸せすぎる。
豆腐屋の七兵衛さんの人の好さがさらりとした語りから伝わってきてじーんとくる。
「あなたみたいな方は絶対に世に出る。そうでなきゃだめだ」と言って毎日おからを持ってきてくれた七兵衛さん。
七兵衛さんとの再会のシーンには涙がじわりと…。よかった~。


はん治師匠「妻の旅行」
「妻の旅行」連続記録更新中。


小満ん師匠「宮戸川(上)」
他の人がやるようにお花さんが妙に積極的だったりしなくてそこが好きだな。
短いお芝居を見ているような味わい。


小はん師匠「親子酒」
本当にお酒を飲んでいるような酔っぱらいぶり。
息子が帰ってきたと聞いて目を剥いたのがリアルでびっくりした。


小里ん師匠「五人廻し」
二階席までいっぱいで、お子さんも何人かいたのにまるで気にせず「五人廻し」。さすが小里ん師匠はぶれないなー。謝楽祭でサインをお願いしたら他のお客さんと話したまんま一度も目を合わせることなくサインしてくれただけのことはあるなー。いや、いい意味で。(いい意味?)


一人目の男が花魁がいつまでたっても来ないことを嘆いて「ああ…よしときゃよかった」とつぶやくのが真に迫っていて笑ってしまう。甘い言葉に誘われて銭を払ってやってきて女が来ない虚しさ。そうしてみると女房はありがたい、というのも実に勝手な言い草だけど、笑ってしまう。

妙に堅い言葉で喋る男も面白いけど、「〇〇でげすな」という「酢豆腐」の若旦那みたいな男が最高におかしい。「銭を返せなどと言うのは野暮の極みでげすな」などと言いながら最後は「えーん」と泣き出すおかしさ。

誰のところも回らずに田舎のお大臣のところにいた花魁。彼女の言った一言で、そうやって部屋を廻る花魁の侘しさも伝わってきて、なかなか苦い後味。

そんなに聴く噺じゃないけど面白い。好き。

末廣亭3月上席夜の部

3/10(金)、末廣亭3月上席夜の部に行ってきた。


・小蝠「やかん」
青年団 コント
・圓馬「干物箱」
・伸治「ぜんざい公社」
・扇鶴 音曲
・蝠丸「文七元結

圓馬師匠「干物箱」
見るほどに好きになる。トリネタも見てみたいと思っていたら浅草演芸ホール4月上席夜の部のトリ!これは行かねば。


伸治師匠「ぜんざい公社」
ほんとにしょうもない噺だなぁといつも思うんだけど、伸治師匠が笑いながらなんかほんとに楽しそうにされているのを見て、思わず笑ってしまった。昭和チック。


扇鶴先生 音曲
好きだわー。初めて見た友だちが目が釘付けになっていて「な、なに?この人は?」とハートを射抜かれていたのがうれしかった~。でしょでしょ気になるでしょいいでしょ。


蝠丸師匠「文七元結
まくらなしでいきなり噺に入り、うおお!と思っていると「もう落語に入ってますよ」と言うので大笑い。この師匠のこういうゆるーいところが大好き。
あまり好きな噺じゃないんだけど、蝠丸師匠の「文七元結」はとってもよかった。

左官の長兵衛がいかにも江戸っ子らしく明るくて軽い。
博打に夢中になるあまり仕事をしないもんだから女房は着物も全部売るしかなくて思い詰めた娘は女郎になろうとさえしているのに、悲惨な感じが全然しない。
佐野槌の女将は長兵衛にちくりと言うけど、さばさばした印象。

吾妻橋のところで身投げしようとする文七を助ける長兵衛。
十両ないと死ぬと聞いて長兵衛が「五両にまからない?」「他のやつが通らないかなぁ。代わってもらいてぇなぁ」と言うのがすごくおかしい。
しょうがねぇなぁと五十両を文七に投げつけるんだけど、「この金はこれこれこういうわけで」と未練がましく説明するのも、人間らしくて好き。

文七が店に戻ってからの展開もスピーディなのでダレなくていいな。ここをねちねちやられると、ああもう!って焦れてくる。

こういう噺を「人情」とか「江戸っ子」とかっていうふうにきっちり理由付けをされると、「こんなことあるわけないじゃん」と思ってしまうんだけど、笑いたっぷりに軽くされると「落語の世界だなぁ」とそのありえなさも含めて楽しめる。

楽しかった!

そして幕が下りたあと「アンコールはありません」「千秋楽を迎えられました。ありがとうございました」と最後までサービス精神満載の蝠丸師匠、大好きだ。

第54回白酒ひとり

3/9(木)、国立演芸場で行われた「第54回白酒ひとり」に行って来た。
この会は前に一度来たことがあって、できれば定期的に来続けたい!と思ったのだけれど、チケットがぴあで土曜日に売り出すのでたいてい買いそびれてしまってなかなか行けず。
一度はヤフオクでチケット買ったんだけど、なんと当日過ぎてもチケットが届かず、お金だけ払って行けなかったという悲しい思い出。
今回は土曜日にチケットを予約してようやく行くことができた。
 
・はまぐり「たらちね」
・白酒「馬の田楽」
・白酒 桃月アンサー
・白酒「辰巳の辻占」
~仲入り~
・白酒「花見の仇討」
 
白酒師匠「馬の田楽」
この間、新橋で行われている落語会に呼ばれた。
その会はすごくちゃんとしたお弁当が出て日本酒の試飲会もあってなおかつ落語というなかなか贅沢な会だったんだけど、その前の時の会で落語をやったのは風間杜夫さん。
もうなんなのか。風間杜夫。なにを目指しているんだ。こんなところにまでか!と。
顔もよくて役者としても一流でそれで落語の方に来ないでもらいたい。
自分だってもし顔が良ければ落語なんてやってないで役者になった。こういう見た目だからやむを得ず落語家になっているのに、そこを荒らさないでもらいたい。負けるに決まってるから。
だってあちらはたとえうけなくても噛んでも、ちっ(渋い顔)てやれば「きゃーー」ってなるわけだから。ずるい。
こっちは崖っぷちでやってるんだ。もう下がる場所がないんだ。
 
でも俳優さんが落語をやってみたいという気持ちになるのはなんとなくわかる。
一人芝居といってもそれなりに準備がいるし小道具もいるけど、落語はまさに体一つでできる。やってみれば意外と難しくない。できちゃう。
それでもあれでしょ。風間杜夫さんは「火焔太鼓」とかね。志ん朝師匠が好きなんでしょうね。きれいなネタでね。百両見て「あーーー」なんてね。
「勘定板」やりやがれ!って思いますけどね。
 
…わはははは。
どきっとするような毒を吐きつつも、いやな感じが全然ないっていうのがすごいな。白酒師匠は。
それから、これからは動物に落語をやらせればいいかもしれない。犬が兄弟子なんてことになったらいやでしょうね、なんていうまくらから「馬の田楽」。
 
白酒師匠の「馬の田楽」は前にも聞いたことがあるけど、いいなあ。ちゃんと田舎の風景が浮かんできておおらかな気持ちになる。
それほど大きく変えているわけじゃないけど、耳の遠いおばあさんが聞き違いをするとき、「え?アルゼンチン?」とか「南米を離れろ」とかいうのがすごくおかしい。
面白いんだけど、それがこの噺ののどかな風景の邪魔をしてないっていうのがすごい
 
白酒師匠「辰巳の辻占」
雲助師匠で何回も聞いている噺。
おたまがいいねー。ケロッと悪くて。
男の方も全然軽くてそれが楽しい。
 
はんちゃんがいなくなったらあたしの人生、何にも楽しいことがなくなっちゃうと言っていたおたまが、はんちゃんが死ぬと聞いて「でもほら…生きていれば他にも楽しいことは見つかるもんだし」と言ったのがおかしい。
はんちゃん自身も「たしかにな。おたまが言ってた通り、生きていれば他に楽しいこともあるよな。おれもう3つ見つけちゃった」と言ってたのもいい。
楽しかった。
 
白酒師匠「花見の仇討」
こういう噺を聴くと、ああ、春が来るんだなぁと感じられてとてもうれしい。季節を感じられる噺があるっていうのが落語の好きなところ。
 
耳の遠いおじさん、巡礼兄弟の仇討と聞いて助太刀をしてやろうという侍とそれぞれのキャラが生き生きしているので、退屈しない。
仇討をやっていて刀が重いといって泣き出すろくちゃんがおかしかった~。
 

 

 

 
 

小んぶにだっこ

3/7(火)、落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。
 
・小んぶ「親子酒」
~仲入り~
・小んぶ「(江戸っ子の新作)」
・小んぶ「死神」
 
小んぶさん「親子酒」
この会を始めて1年が経過しました、と小んぶさん。
ちょうど一人暮らしを始めてからこの会をやるようになったのでそちらの方も1年越え。
ずっと痩せたいとは思っていたけどなかなかダイエットというのもやらなくて、でも一人暮らしを始めたらみるみる体重が落ちてきて気が付いたら100キロ超えだった体重が89キロまで。
なーんだ。ダイエットって結構簡単じゃん。ダイエット本出せるんじゃ?なんて思っていたけど、それからゆるゆると体重がまた増え始め、現在95キロ。
リバウンド…という言葉はまだ使いたくない。けど。明らかにリバウンド、です。
 
で、日暮里にはたこ平兄さんがいてよく誘ってくれる。
誘われると付き合うんだけど、たこ平兄さんは…こういったらなんですけど、私のことがかなり好きみたいで、二人で飲んでいて酔っぱらってくるとほかの人には言わないような本音とか鬱憤を私に言ってくる。もう小んぶ目がけてぶつけてくるんです。
これが結構きつい。もうなんとかしてそういうのは避けたいと思って、そうだ、じゃ先に酔っぱらっちゃえばいいじゃないかと思いつきまして、ある時、もうがんがん率先して飲んだんです。そうしたらもともと酒に強くないので1時間ぐらいでべろんべろんになりまして。
たこ平兄さんは優しい人なんで「おい、小んぶ、大丈夫か?もう帰った方がいいよ」と。
これはいい!とその後もその作戦でいっていたら、どうやらそのことにたこ平兄さんが気付いたらしく、自分も負けじとハイスピードで飲むようになり、もう二人でわれ先に酔っぱらおうとするように。
この間もそんなふうに二人でべろんべろんになって、WIIがほしい!と盛り上がって、ツタヤに行って中古で買って夜通し二人でやった。
たこ平兄さんはとても懐の広い方なので、みなさんももしWIIやりたかったから、たこ平兄さんの家に行くといいです。
 
そんなまくらから「親子酒」。
これがなんかもう…酔っぱらう前からお父さんがちょっと変(笑)
私はもうとにかく「親子酒」は聞きすぎているのでフツウにやられると「またか」感がハンパないので、これぐらい異常にやってもらったほうが楽しくて好きだけど、怒る人もいるかもしれない。
酒を飲ませてくれ、一杯だけ、と何度も頼むお父さんにおかみさんが「だめですよ」と言い続けていると、「こんなに頼んでもだめかい?そうか。わかった。じゃ考えがある」と言ったあとに「一杯飲ませてくれ」と同じセリフを吐くの…すっごく面白い。
小んぶさんのこういう独特なセンス、大好きだ。
 
小んぶさん「(江戸っ子の新作)」
仲入りをはさんで、小んぶさんのドキドキの新作。もうこれが楽しみで楽しみで。
今回は、3代続くと江戸っ子っていうけど、それが22代続くと逆に変なイントネーションになってしまうという新作。
もうこれがシュールでばかばかしくておかしい~。もうなんだろう、この世界。いわゆる新作のセオリーとかそういうの全部無視で、自分の感性だけで作ってるヒリヒリ感。でもそれがこう新作によくあるダレる感じにならない不思議。
サゲを言った後に小んぶさんが「ああっ」って顔をしたのがまた面白くて。いいと思う!
 
小んぶさん「死神」
小んぶさんが心を整えるために新作をやる前に仲入りをはさんでいるんだけど、新作のあとに仲入りをとったほうがいいような気がしないでもない。
聞いている方もあの新作のあとに正統派の噺っていうのにギャップがありすぎて…。
 
「親子酒」とは打って変わって、とてもちゃんとした「死神」。
結構死神が不気味でこわい。何を考えてるか計り知れない感じ。
主人公の男はぱーぱー軽いのでそこが落語らしくて楽しい。
もう少したっぷりやるところはたっぷりやったほうが聞いてる方が余韻に浸れると思った。
 

 

 

 

 

ぎやまん寄席 馬治・さん助ふたり会

3/6(月)、湯島天神 参集殿で行われた「ぎやまん寄席 馬治・さん助ふたり会」に行ってきた。
 
・たま平「一目上がり」
・馬治「片棒」
・さん助「不動坊」
~仲入り~
・さん助「ぞろぞろ」
・馬治「抜け雀」
 
たま平さん「一目上がり」
初めて見た時は「うまい」と思ったけど、見るたびに苦手になっていくなぁ…。笑わせよう笑わせようとしてくどいから、聞いていてじりじりしてくる。
そして兄貴分が途中からご隠居口調になっちゃってた。うけようとするあまり散漫になっているような…。
 
馬治師匠「片棒」
40になって初めて経験することってあるんですね、と馬治師匠。
今年になって初めて花粉症になった。自分の場合は鼻水やくしゃみより咳。あと鹿芝居に出ていてお化粧をしたら肌がかぶれて大変。医者に見せたらこれも花粉症の症状らしい。
薬を飲んでいるから頭もぼーっとしていて、この間落語会で「井戸の茶碗」をやったんだけど、最初に仏像からお金が出てくるところ、本来は五十両なのに五百両と言ってしまった。
そうすると井戸の茶碗はもっと高くしないといけなくなっちゃって仕方なく一千両にして、ほんとは懐から小判を出すところを、つづらをえっほえっほと肩に担いで持っていくはめに。
 
…ぶわははは。それはそれで面白いなぁ。
馬治師匠って古典に時々独自なクスグリを入れるから、わざとやったのかと思いそうだな。
 
それから駐車場で隣の車のバンパーをこすってしまった。
初めての事故だったのでこれはへこみました。
結局示談にできたんですが、問題はこの車、私のものじゃなくて…金原亭馬生さんっていう方の車だったんですね…。
 
…いやぁ、もう面白すぎるよ、馬治師匠!
とほほって感じで言うんだけど、それがこうほどよくとぼけているからすごく楽しい。好きだなぁ、この師匠。なんたって顔がすごく好み(←そこ?!)。なのにちょっと残念な感じがただよっていてそこがとっても噺家さんらしくて、たまらなく好き。
 
そんなまくらから「片棒」。
3兄弟がそれぞれキャラが立っていて面白い。
長男が弔いと聞いて「しめしめ」みたいなちょっと悪い顔。
次男はいかにもはすっぱな感じで入って来て、三男は陰気っぽい。
ふつうこの噺って次男のところが一番面白いけど、馬治師匠のは三男がほんとにおやじの弔いになんかお金使いたくない!っていうのが出ていて、それがすごくおかしかった。
次男のところがもっとばかばかしくはっちゃけたら、もっと陽気になって楽しいと思う。
 
さん助師匠「不動坊」
大家さんに呼ばれた吉さんがお滝さんとの結婚を言われるところから。
お滝さんは俺の女房ですからと口をとんがらせるのがおかしいけど、大家さんが「吉さんはまじめでおとなしくて」と言ってるだけのことはあって、そんなにエキセントリックな人物じゃないところが好印象(笑)。
お湯に行こうとして手拭いと間違えて鉄瓶を持って出かけそうになって、いけねぇいけねぇと戻って来て今度は越中ふんどし。今度こそと手拭いを持って玄関を出ようとして扉を閉めてしまい頭をぶつける。ぶわははは。
 
そのあと、風呂で他の3人の悪口を言ってのろけるところはフツウなんだけど、帰ろうとする吉さんに徳さんが声をかけて「どういうことだ」というのは初めて聞いた。
 
徳さんのところに集まって不動坊の幽霊を出そうと相談して、幽霊役に噺家頼むんだけど、これが前座じゃなくて引退したギスケじいさん。ギスケじいさん、登場する時に、げほっげほっと激しく咳き込んで、もう最初からだめな感じが漂っていておかしい。
アルコールとたいこを万さんに頼んだあと、このギスケじいさんが「私のセリフは?」と聞くと、徳さんが教えるんだけど、これをギスケじいさんが何度も「え?」と聞き返すのがおかしい。
そのやり取りを何度かやった後ギスケじいさんがやって見せるんだけど、これが芝居調でなかなかの迫力。
 
屋根に上がるのもぜいぜい言いながらで今にも死にそうなギスケじいさん。
徳さんと万さんと喧嘩をしてると「おい。ギスケじいさんが寝ちゃったよ」。
そしていよいよ幽霊で出るんだけど、これが先ほどの練習と打って変わって棒読み。
「おい。本番の方が下手じゃねぇか!」には大笑い。
 
吉さんに祝儀をもらうと寝返るギスケじいさんをひもで引っ張ると、ぶるん!と幽霊の形になるんだけど、このぶらさがる形がやたらとおかしい。この形だけでこんなに笑えるって…ずるいよ!
ひっくりかえるほど面白かった~。
 
さん助師匠「ぞろぞろ」
前半がたっぷりだったので、あっさりと。
「ご利益ですよ」というおばあさんがちょっと怪しげなのがさん助師匠らしい。
あと、床屋の親方っておじいさんだったの?!
サゲがちょっと気持ち悪いのもさん助師匠らしい。(ほめてます?
 
馬治師匠「抜け雀」
お人よしで一文無しばかり泊めてしまう宿屋の主人が馬治師匠と重なって見えて、とってもほほえましい。
硯を持ってこいと言われて「もういやになっちゃうなぁ。」とぶつぶつ言いながらも、はいはいと言うことをきいてしまう人の好さが心地いい。
雀が抜け出して驚いて女房のところに駆けつけるも、説明がわやわやしていて聞いてもらえないのがおかしい。
評判になって宿屋がどんどん大きくなって、本館、別館、アネックスとできるっていうのに大笑い。
 
老人が止まり木を描いてやるというと、墨を擦って「いい匂いですね。鼻だけはほめられます」と言うのもおかしいし、絵を描くと言われて角度を調整して「慣れておるな」と言われるのも楽しい。
なんか馬治師匠ってこういう人情噺がとっても合ってる気がする。じっくり聴かせるけど、くどくなくておかしみもあって…いいな。
 
いやー楽しかった。
この二人会、いいなぁ。すごくいい組み合わせ。
そして入り口に立てかけてある「馬治・さん助の会」というのが「馬治さんを助ける会」に見えるところがまた楽しい(笑)。

人生激場

 

人生激場 (新潮文庫)

人生激場 (新潮文庫)

 

 ★★★

気鋭作家の身辺雑記、だけに終わらぬ面白さ!プレーンな日常を「非日常」に変えてしまう冴えた嗅覚。世間お騒がせの事件もサッカー選手の容貌も、なぜかシュールに読み取ってしまう、しをん的視線。「幸せになりたいとも、幸せだとも思わないまま、しかし幸せとはなんだろうと考えることだけはやめられない」。美しい男を論じ、日本の未来を憂えて乙女心の複雑さ全開のエッセイ。  

 全体的にはそうでもなかったんだけど、時折妙にツボにはまるものがあってそこは笑いが止まらなかった。
なんていうかあれだ、笑う門には福来る。ばかばかしくてもなんでも笑えるのは幸せだ、ほんと。

柳家小三治一門会 三鷹市公会堂光のホール

 3/4(土)、三鷹市公会堂光のホールで行われた「柳家小三治一門会」に行って来た。


・小はぜ「道灌」
・禽太夫「くしゃみ講釈」
~仲入り~
・そのじ 寄席囃子
小三治「小言念仏」

 

小はぜさん「道灌」
前方に徹して基本通りの「道灌」。独自のクスグリとか入れてないのにちゃんと面白い。
前座時代、小はぜさんの「道灌」を何回も聴いたなぁ。なんて欲のないきれいな落語をする人だろうと思って好きになったんだった。


そのじさん 寄席囃子
この間のきゅりあんの時にもやった噺家さんの踊りについての話。「噺家さんの中には踊りを踊られる方が多くいらっしゃいます。その中には上手な方。それなりの方。いらっしゃいますけど、私は気を付けて見ないようにしております。以前ある方が踊ってるところを見ておりましたら、気取ってくるりと回った姿が…もうなんともいえない哀愁がありまして、私それがツボにはまって笑いが止まらなくなってしまって、最初から最後まで歌うことができず三味線だけになったことがありました」。
きゅりあんでは「普通の方」と言ってそれ以上はおっしゃってなかったんだけど、「哀愁」って…おかしい~。最高。


小三治師匠「小言念仏」
都知事のことや豊洲移転のことについて話し出したら止まらなくなってしまった小三治師匠。名前が出てこなかったり話していて気持ちが沈んできたりして「この話はやめましょう」と言うんだけど、「いやでもほんといったら大事なことですよ」「落語なんかより大事です」とやめられない。 

そのうち「私に新たに病気が発見されました」と。まだ誰にも言ってないけど、ここは三鷹ですから言っちゃいますけど…といって、「永六輔と同じ病気です。ええと…バセドー氏病」。
ええ?バセドー氏病?!永六輔さんってそうだったっけ?
最初の症状は筋肉が堅くなって動かしづらくなるんです。私それで気づきまして。そのうち症状が進むと手が震えてくるんです、湯呑を持ってもその手が震えて…。と言ってやってみせるとお茶がこぼれて「何もそこまで震えて見せるこたぁなかった」。
なんて言ってると小はぜさんが意を決したように飛び出してきてなにやら紙を師匠に見せると「え?ああー?いいんだよ。そんなの。え?なに?あーーマネージャーからで”師匠はバセドー氏病ではありません”って。いやあいつはね…まぁ心配してくれてるんですけどね。あれ?わたし、バセドー氏病って言ってました?違いました。ええと…なんていったっけ。横文字で。脳からくるやつで。ほらあれ。ほら。」

パーキンソン病
あれなんていったっけって言ってる中でこの名前も出てきたみたいだけど、師匠はなんかぴんとこないようで。
「薬飲み始めたら効くんですよ、これが」と。「ま、聞いてもこの程度ですが」。

自分はこれから先どうなっていくのかわからない。
先代の文楽師匠は「名人」と呼ばれた方である時高座に上がっていて登場人物の職業が出てこなくなってしまった。しばらく絶句して「勉強してまいります」と頭を下げて高座を降りてそれっきりもう高座に上がることはなかった。それを見て自分は「さすがは名人だ」と思った。
私はどうでしょう。時々あるんですほんとの話。登場人物の名前が出てこなくなったりすることが。はっつぁんだかくまさんだか分からなくなって名前が交互になっちゃったり。そういうときはさーーっと血の気が引くんですけど。でもなんとかごまかしてやっちゃう。
私もいつか文楽師匠みたいに頭を下げて降りるときがくるんでしょうか。それとも…私は名人じゃないからそういうことはこれから先もしないんでしょうか。

なんて言ってて、「もうこの話はやめましょう」とこの間と同じく船村徹の話に。歌ったり、名前が出てこなかったり、また歌ったり。
そのうちおそらく幕のところからマネージャーさんが合図を送ってきたのか「わかってるよ。わかってますよ。時間がおしてるんでしょ。わかってるって。…みなさんだって…これで帰っても別にやることもないでしょ」。

…ぶわはははは。もう小三治師匠、最高だよ。
その後もしばらく歌ったりしてたけど、陰陽のまくらから「小言念仏」。さすがに落語やらずにおりるわけにもいかないと思ったのかな。

「小言念仏」だとがっかりする人もいるみたいだけど、私は大好き。だってほんとにチャーミングなんだもん。
赤ん坊に小言を言いながら「ばぁ」ってやるところ。かわいいー!

人間国宝」の落語を楽しみにしてきた人には気の毒だったけど、自由に振る舞う小三治師匠が見られて私は満足だったな。

末廣亭3月上席夜の部

3/3(金)、末廣亭3月上席夜の部に行ってきた。


・小蝠「出張中」
宮田陽・昇 漫才
・圓馬「干物箱」
・伸治「棒鱈」
・正二郎 太神楽
・蝠丸「叩き蟹」

 

小蝠師匠「出張中」
滑舌の悪さがはんぱない。
「今噺家が800人いるんですよ。そんなにいりますか。噺家なんて5人もいれば十分じゃないですか」と言うけど、やぶへびなのでは…。
落語協会でも全く同じことを言ってる人がいるけど、なぜその5人には入れない人がそれを言うんだろう、と思ってしまう。


圓馬師匠「干物箱」
あーなんか楽しい、この師匠。すごく好き。
若旦那は遊び人っぽいけど品があって、善公はとにかくパーパーしたバカで陽気で、大旦那はどっしりとした威厳がある。
テンポがすごくいいから聞いていて楽しいし、でもちょっとこうどきっとするようなところもあって…なにかすごく惹かれる。


伸治師匠「棒鱈」
ぐずぐずの酔っぱらいと田舎者だけど威厳のある侍の対比が面白い。


蝠丸師匠「叩き蟹」
甚五郎が蝠丸師匠らしく穏やかなんだけど時々ちょっと怖くて面白い。「私も筋を通すから、払うものは払う。燃やすものは燃やす」と言うときに、ほんとに燃やしかねないような迫力があるんだよな。
えらそうなことを言ったわりに実はお金がないということが分かってもそんなには慌てず蟹を彫って渡すと、こんなもんいらないやい!と言いながらも餅屋がそれ以上言わずに帰すというのもなんかいいなぁ。これが落語の好きなところ。

ほのぼのとじんわりと楽しくてよった~。
「叩き蟹」、前に聞いたことがあったんだけど、ブログを検索したら出てこなかった。いつ聞いたんだろう?