りつこの読書と落語メモ

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平場の月

 

平場の月

平場の月

 

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朝霞、新座、志木―。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる―。心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。 

 50代になって再会した青砥と須藤。お互いバツイチで中学時代は淡い思いを抱いていた相手。時々会ってどうってことない話をしてお互いの屈託をこっそり逃がす、そんな約束で始まった二人の関係は、須藤が癌にかかったことで変化していく。

青砥の須藤を支えたいという気持ちと二人の未来を夢見る気持ち。
須藤の青砥に甘えたい気持ちと二人の未来を想う青砥に真実を伝えられなかった気持ち。
二人のすれ違いが辛いけれど、甘えなかったということがきっと須藤の最期の日々の支えだったようにも思える。

とてもよかった。久しぶりに本を読んで号泣した。