りつこの読書と落語メモ

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色ざんげ

 

色ざんげ (岩波文庫)

色ざんげ (岩波文庫)

 

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欧州から帰朝した洋画家湯浅譲二は、毎日手紙を寄越す不思議な女に翻弄されるうちに、女は失踪。女の友人つゆ子と捜索の旅に出た彼はつゆ子に魅かれるが、さらに湯浅の絵のファンだという女学生が現れ……。深く誰か一人を愛するわけではない男と、男の愛を?んだようで常に不安な女の姿を情感豊かに描く。(解説=尾形明子・山田詠美)

昨年読んだ「文豪たちの友情」で、梶井基次郎宇野千代の関係について触れられていて、二人の仲を尋ねられた宇野千代が「顔が好みじゃない」と否定したが、実は恋愛関係があったのかもしれない。恋多き女宇野千代が梶井のことを守ろうとしてそう答えたのかもしれない、というような話。
それを読んで、そういえば一時期「恋多き女」としてよくテレビに出ていた宇野千代の作品を一度も読んだことがなかったなと思って、読んでみた。

画家・東郷青児をモデルに彼と関係を持つ三人の女が描かれる。言い寄られればふらふらと関係を持ち、その友人の方が美人だと思えば今度は自分から言い寄り…駆け落ち、重婚、心中と、主人公の譲二の行動は恋愛に生きる男そのものなのだが、不思議と熱が感じられない。
女の側の熱情や思惑にただ流されているようなのだが、時々激情に駈られて無分別な行動に走る。

彼の虚無感が女から愛情を男からは同情を引き寄せるのか。
身勝手な男だが哀れでもあるし羨ましくもある。こういう生き方がまかり通った時代だったのだなと思うと、今の方がずっと不自由に感じる。
色ざんげ」というタイトルも秀逸。

勢いのある美しい文章。ほかの作品も読んでみたい。