りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

こうしてお前は彼女にフラれる

こうしてお前は彼女にフラれる (新潮クレスト・ブックス)

こうしてお前は彼女にフラれる (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

ニュージャージーの貧困地区で。ドミニカの海岸で。ボストンの大学町で。叶わぬ愛をめぐる物語が、傷ついた家族や壊れかけた社会の姿をも浮き彫りにする―。浮気男ユニオールと女たちが繰り広げる、おかしくも切ない9つの物語。大ヒット作『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の著者による最新作。

「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」で語り手をつとめたモテ男ユニオールが主人公の連作短編集。
オスカーは徹底的な非モテ男だったが、ユニオールはモテ男である。ユニオールの人生におけるお手本がもてもてでイカしててクレージーで若くして癌で亡くなった兄・ラファ。
兄の死後、まるで兄の呪いがかけられたかのようにモテるようになったものの幸せになれないユニオール。

誰かと真剣な関係を築く段になると、信頼関係をぶち壊すためのように浮気をしてその証拠を残す、まるでチルチルミチルのように。
愛し愛されたいのに失ってばかりの主人公が可愛そうなのだが、しかしどこかで「ざまあみろ」と思うのは、私が女だからなのか。

浮気をされて怒り傷つきながらもただでは起きないしたたかな女たちがいい。
そしてそんな恋愛を繰り返しているうちにどんどん疲弊していくユニオール。女は過去をなかったことにできるけれど、男はいつまでも過去を引きずる生き物なのだなぁ、と思う。

移民、差別、家族、病気、様々なことが底にはあることがほのめかされるが、なにもそれは彼に限ったことではなくて、みな何かしら抱えて生きているのだ。
10代のユニオールが近所に住む女教師とのっぴきならない仲になる「ミス・ロラ」。
明らかに女性として劣化が始まっている女性を自分の恋人と比べるユニオールの視線が痛いし、愛しているわけでもないのに繰り返し彼女の家を訪れるユニオールのことを酷いなぁと思いながら読んでいたのだが、彼女がユニオールに残した爪痕を思うと、どちらが被害者なのかわからなくなる。いや、恋愛なんてそんなものなのかもしれない。

都甲さんのエモーショナルな解説にもグッとくる。
次の作品もまた翻訳されますように!