りつこの読書と落語メモ

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ベルリンは晴れているか

 

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 

 ★★★★★

総統の自死戦勝国による侵略、敗戦。何もかもが傷ついた街で少女と泥棒は何を見るのか。1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅出つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり―ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。最注目作家が放つ圧倒的スケールの歴史ミステリ。 

素晴らしい読みごたえ。

ユダヤ人がみな「悪」なわけないのに、国をあげてそう言いきってそれを支持する国民がかなりの数いること。またそれを支持したことなど一度もないのに「国民」ということで責めを追うこと。
「国」イコール「個人」ではないけれど「個人」は「国」に属していてそれに縛られ守られている。
国がどんどん望まない方向に進んでいき、学校でもそういう教育がなされ、隣人たちがお互いを監視しあい密告され殺されていく。

主人公アウグステの頑なな態度や行動が最初読んでいて「謎」だったけれど、最後まで読んでそういうことだったのかと納得した。
そして彼女がまだ少女であることに胸が痛む。
彼女の相棒となるカフカの過去と現在に苦い気持ちになったけれど、それでも彼とて生きるためにこうするしかなかったのだとも思え、憎むことはできない。

今の日本の状況も考えずにはいられなくて読んでいてしんどかったけれど、読んで良かったと思う。主人公をはじめ、登場人物が魅力的で生き生きとしてることが救いだった。
ミステリーとしても面白さもあった。