ハウスキーピング
★★★★★
鉄道橋の脱線事故で、列車とともに湖に沈んでしまった父親。これをきっかけに平凡な家族の歯車は世代を越えて狂っていく―拠り所となる家(ハウス)の喪失の悲しみを、息をのむような美しい自然描写が静かに包む傑作。ピューリッツァー賞、全米批評家協会賞など数々の賞に輝き、オバマ前大統領も愛する、アメリカ現代文学を代表する作家の記念碑的名作。PEN/ヘミングウェイ賞受賞。
素晴らしかった。
家族の喪失が描れているが、人間の生死を超えた視点(宗教?自然?人間の営みの拠り所となる「家」)から描かれているので、壮大な光景を目にした時のような感動がじわじわくる。
物語の語り手であるルースの視点が独特で、これは悲劇なのか喜劇なのかはっきりしないのだが、読んでいてとても心地よく、この世界にいつまでも留まっていたいような、どんな結末が待っているのか見届けたいような、不思議な感覚があった。
親もなく友だちもいないルースは孤独なのだが、だからこそ研ぎ澄まされた感性で広大な自然の中生き物の声を聴き見えないはずのものの存在を感じながら暮らしている。
根無し草のような叔母シルヴィは一緒にいてもどこか心ここに非ずで幼い頃はそれに不安を感じるルースだったが、もしかするとシルヴィーはこの世とあの世を結ぶ存在(少しあの世寄りの)だったのかもしれない。
解説を読むとこの小説は様々な文学作品を踏まえて書かれているので、挙げられた作品を読んでからまた読むとまた見えてくるものがあるのかもしれない。
とてもよかった。何度も読み返したい。そして他の作品も読んでみたい。