りつこの読書と落語メモ

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地球の中心までトンネルを掘る

地球の中心までトンネルを掘る (海外文学セレクション)

地球の中心までトンネルを掘る (海外文学セレクション)

★★★★★

「あなた」だったかもしれない人たちの物語。代理祖父母派遣会社で「祖母」を演じる女性、折りヅルを使う遺産相続ゲームに挑む男たち…どこにでもいそうな人々が送る、ほんの少しだけ「普通」から逸脱した日常。シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞受賞作。

とてもとても良かった。 設定や状況は「奇想」と呼ばれる類のものなのだけれど、語られるのは誰にも覚えのある寂しさや心もとなさ。

世間という海を上手に泳ぐことのできない人たち。
心を許せる友だちや恋人を作ることができず家族とも心を通わせられず、自分の殻にとじこもって自分の小さなお花畑を必死に守ろうとする人たち。
家族を持たないことを信念としながら疑似家族に真の家族を見ていたり、自分のコピーのようなイケてない友だちとふとしたことから一線を越えてしまったり…不器用な彼らをもどかしくも思うけど笑うことなどできない。

胸に痛いけれどユーモアもあって微かな希望もあってとても良かった。
最近結構「あたり」の短編集ばかり読んでいるのだけれど、その中でもピカ一に好き。