りつこの読書と落語メモ

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愛をひっかけるための釘

愛をひっかけるための釘 (集英社文庫)

愛をひっかけるための釘 (集英社文庫)

★★★★★

早く、一秒でもいいから早く大人になりたい。少年たちは理不尽な叱られ方をする度に怒りを一種のホルモンに変えて成長していく―。空を飛ぶ夢ばかり見た少年時代、よこしまな初恋、金縛りから始まる恐怖体験、さまざまな別れと出会い、とことん睦み合った酒の正体、煙草呑みの言いわけ。薄闇の路地裏に見え隠れする、喜びと哀しみと羞じらいに満ちた遠い日の記憶。

タイトルの「愛をひっかけるための釘」は、フランスかイギリスの格言に「女にとって男は愛をひっかけるための釘」というのがあり、そこからとったらしい。
らもさんは『これを考えた男はきっと「釘抜き」みたいな女にしか人生で出会わなかったのだろう』と異論を唱えているけれど、そうとも言えるしそうじゃないとも言えるし…。
ハロー・グッドバイの章がとてもよくて思わず涙がホロリ。

「出会いと別れについて」より
恋愛は人を高みへと押し上げるが、その高さはそこからすべてのものが見おろせてしまうような冷酷な高さである。この世のものならぬ至福の中に自分があればあるほど、いつかそのめまいに似た幸福に終わりがくるであろう予感も確固たるものになってくる。始まらなければ終わることもないが、恋愛という音楽が鳴り始めてしまった以上、そこには必ず終わりがくる。永遠にそれが鳴り響き続けることはない。

「サヨナラにサヨナラ」より
人間の実相は刻々と変わっていく。無限分の一秒後には、無限分の一だけ愛情が冷めているかもしれない。だから肝心なのは、想う相手をいつでも腕の中に抱きしめていることだ。ぴたりと寄りそって、完全に同じ瞬間を一緒に生きていくことだ。二本の腕はそのためにあるのであって、決して遠くからサヨナラの手をふるためにあるのではない。

どんなおじいさんになるのか見ていたかった。いなくなるのが早すぎだよ、らもさん…。