りつこの読書と落語メモ

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ラブレス

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★★★★★

馬鹿にしたければ笑えばいい。あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。「歌」が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながら―。他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」。「愛」に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?今年の小説界、最高の収穫。書き下ろし長編。

北海道で極貧の暮らしを送る百合江は、酒を飲んで暴力を振るう父、そんな父に逆らうこともなく死んだようになっている母、弟たちと暮らしている。
長いこと親戚の家に預けられていた妹の里美が家に戻ってきて、彼女を庇護しながら、バスガイドになりたいという小さな夢を抱いていた。
しかし夢は叶わず奉公に出されそこでの生活にようやく慣れてきた頃、たまたま見に行った旅の一座のショーに心奪われ、全てを投げ出して一座に加わる。

座長が病に倒れて一座が解散になったり、父親のいない子どもを産んだり、妹の薦めでお見合いをして結婚するものの夫になった男の借金の肩代わりに旅館で働くようになったり。
百合江の人生ははたから見れば悲惨なものだ。
でも読んでいて不思議と辛い気持ちにならない。それは百合江が決して自分の人生を不幸とは思っていないからだ。

受け身で根無し草のような百合子のたくましいこと。
先の計画も立てずただ流されているだけのような百合江なのだが、だからこそしっかり者の里美よりも幸せそうにも見える。
イマドキの価値観とは対極にある百合江の人生だけれど、これはこれで悪くはないんじゃないか、と思ってしまう。

幸せの基準はそれぞれ。強さや優しさにもいろんなかたちがある。
母娘の距離感もこれはこれでありかもと思える。

ラストも良かった。私は大好き、これ。