りつこの読書と落語メモ

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われらが歌う時

われらが歌う時 上

われらが歌う時 上

われらが歌う時 下

われらが歌う時 下

★★★★★

受賞多数、驚天動地の結末。現代世界文学の最前線、あのパワーズの渾身の最新作。
あまりに美しい歌声は、時をも凍りつかせた――。ユダヤ人物理学者と黒人歌手が恋をする。子どもは3人。天才声楽家の長兄、凡庸なピアニストの弟、音楽に天賦の才を持ちながらも尖鋭的な活動家となってゆく妹。音楽は、時間は、家族を再びつなぐ絆となれるのか。現代世界文学の最重要作家が紡ぐ聖家族の物語、瞠目の最大作。

パワーズ、苦手なんだよねぇ…。もう明らかに私と脳みその詰まり具合が違うでしょう…。
いやそれを言ったらどの作家の作品も私の弱い頭ではきちんと理解することは難しいのだけれどね。でも頭で理解できなくてもハートで感じることはできるので、読み落としていたり理解が足りないところはあっても、それはそれ。とにかくハートにずどんと響いてくるものがあればそれで良し、と開き直っている部分もあって。
そんなやわな読者には、パワーズは噛み応えがありすぎるっていうかね…近づこうとしても近づけない作家なんだよね。

それでもこの作品は以前読んだ作品と違って、ものすごくエモーショナルだったのでね。思いのほか物語に入り込んで読むことができたのだった。

黒人とユダヤ人の間に生まれた子ども3人。彼らは人種を超えたところで育てるのだという両親の想いから、音楽で育てられる。その結果、長男は天才的な声楽家になり、妹は彼らの理想と現実との矛盾に気付き傷つき活動家になり、弟はばらばらになった家族の間の潤滑油のような存在になる。
語られる黒人の生活があまりに過酷で、え?これって最近の話なの?と何度も確かめたくなる。
しかしこれはおそらく誇張でもなんでもなく、現実そのものなのだろう。
だからこそオバマ大統領の誕生というのはものすごいニュースなのだ。

家族の葛藤はすさまじく、それはもう目をそらしたくなるほどなのだが、しかし両極端な別の道を歩いていこうと、信じるものが正反対であろうと、やはり家族は家族なのだ。その描写は圧倒的な力で心を揺さぶってきて、もうなんともいえない気持ちになって涙があふれてきて止まらなかった。

まさかパワーズを読んでこんなに涙を流すことになるとは…思いもよらなかったなぁ…。
ヘヴィだったけれど読んでよかった。