りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

インド夜想曲

インド夜想曲

インド夜想曲

★★★★★

 失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公。彼の前に現われる幻想と瞑想に充ちた世界。インドの深層をなす事物や人物にふれる内面の旅行記とも言うべきこのミステリー仕立ての小説を読みすすむうちに読者はインドの夜の帳の中に誘い込まれてしまう。イタリア文学の鬼才が描く12の夜の物語。

不思議な味わいの小説。
失踪した友人を探してインドを旅するイタリア人「ぼく」が主人公。「ぼく」が何者なのか、なぜそこまでしてその友人を探しているのかはわからない。ちょっとミステリーのようでもあるのだけれど、でも謎解きが中心ではない。だからちゃんとした回答が得られると思って読んでいると、突き放される。でもそれが嫌な感じの突き放され方じゃないのだ。なんか気持ちのいい突き放され方。

友人を探して各地を回るんだけど、その移動とかホテルとかそれから謎を追って出会う人たちとの会話とか。そういうところでなんかインドの深い部分をちらっと見せられる。それがなんとも不思議な感触なのだ。そしておそらくものすごく訳がいい!ものすごくわかりやすく心にストンと落ちてくるような文章。須賀敦子さんってすごいなぁ…。「ある家族の会話」もものすごくよかったもんなぁ…。