りつこの読書と落語メモ

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ベルリン1945

ベルリン1945

ベルリン1945

★★★★★

ついに読み終わってしまった。転換期三部作の最終巻。
前作ではナチ党が政権をとるところで終わり、本作ではドイツが降伏しソ連軍に占領されたベルリンが描かれる。この描かれていない期間がまさに地獄の時代だったわけで、そこを現在形ではなく、終結してから過去を振り返るという形で描かれているところに、この小説のミソだと思う。当時行われていたことは確かにものすごく惨いことだったけれど、なぜそういうことが行われてしまったのか、なぜ人々はナチスを支持してしまったのか、そして支持をした人たちと反対した人たちはその後どうなったのか。そういう中で共産党を支持した人たちはどういう考えを持っていたのか、その人たちはその後どうなったのか。
おそらくその部分を多く語りたかったから、このような構成になっているのだろう。

作者自身によるあとがきにこうある。

ナチの色彩が濃い、古い考えがドイツで息を吹き返している今、口を閉ざしてよいものでしょうか。しかも昔ながらのうそを信じ込まされているのは、よりにもよって若い人たちではないですか。ドイツの多くの若者があのときのことを知らなすぎるだけでなく、あまりに多くのうそを耳にしてきたのです。

それは今の日本でも同じだと思う。戦争については、繰り返し繰り返し語られていくことがとても大事なことだと思う。間違いを犯したのだということを繰り返し語ることが大事だと思う。作者はこのことを特に若い人たちに理解してほしくて、この本をヤングアダルト向けに書いたのだろう。ものすごく意味のあることだと思うし、この本をたくさんの若い人、子どもたちに読んでほしいと思う。戦争を知らない私たち大人が「こういうことがあったんだよ。こういうことは二度とおきちゃいけないことなんだよ」と子どもに語らなければいけないと思う。


以下はネタバレです。




本作の主人公はエンネという12歳の少女。第一作めの主人公ヘレの娘だ。両親が収容所に送られてしまったため、ヘレの両親に育てられたエンネ。祖父母のことを長いこと自分の両親だと思って育ってきたエンネはある日自分の親は国への反逆罪で収容所にいるということを知る。

共産党を支持し収容所で地獄を見たヘレ。共産党には入らなかったけれど体制に反発したために処刑されたハンス(ああ。ハンスがこんなことになってしまうなんて…。ハンスの死について多く語られていないけれど、ものすごくショックでものすごく悲しかった…)。ユダヤ人であることを隠しどうにか生き残ったハンスの恋人ミーツェ。貧困から抜け出したい一心で恋人とナチ党に入党してしまう妹。幼い頃にナチス党を正とする教育を受け軍人になってしまったハインツ。
家族や友人はあまりに過酷な体験の中で引き裂かれてしまう。お互い愛し合って思いあっているのに、理解しあえない。ただただお互いが生きてまた会えることだけを願っていたはずなのに、わかりあえない。それぞれの気持ち、境遇がわかるだけに、なんともやりきれない…。

だからこそ、誰よりも正義感が強く自分の考えがはっきりしていた父親ルディが、ナチに入党した娘をあんなにも嫌悪していたのに、彼女がヘレに会いたいと訪ねてきた時に、「会って話をきいてやってほしい」とヘレに頼み、「間違ったことが罪なのか?」「それでも自分の娘なのだ」と言ったのが、とても胸に響いた…。