りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

耳ラッパ

耳ラッパ―幻の聖杯物語

耳ラッパ―幻の聖杯物語

★★★★

風の老女マリアンが奇妙な耳らっぱを手にし、老人ホームで個性豊かな老女たちと繰り広げる痛快な冒険の日々。魂の遍歴を描く女性シュルレアリストが贈る、92歳のアリスの奇想天外な幻想譚。

とある方の日記で見てから頭にこびりついて離れなかったこのタイトル。奇想天外な話なのだろうなと鼻息荒く読読み始めて、すぐに思ったことはこれはガツガツ読むのに適さない小説であるということ。鼻息荒く読んだらおそらくその鼻息で吹き飛んでしまいそうだ。ガツガツ読むのではなく、この不思議な世界に身を委ね、ぬるいお風呂にゆっくり入るがごとくゆらゆらと味わう方がいいだろう。
なので、私にしたら珍しく時間をかけてゆっくり読んでみた。毎晩寝る前にスタンドをつけて布団の中で読む。すると2ページぐらいでもう目が開けていられなくなる。気がつくとZzzzz…。次の日になるとすでにストーリーがあやふやになっていて、もう一度昨日読んだところから読み始め、おやっとちょっと驚き、しかしまた混沌となってきて、気がつくとZzz…。そんな風にして読んだ。つまりは寝ぼけまなこ読み?!

耳ラッパというのは、補聴器のようなものらしい。昨日読み終わった「ブライヅヘッドふたたび」にも出てきたところを見ると、この作者の想像の産物なわけではないらしい。耳が聞こえない老女が、親友からこの耳ラッパをプレゼントされ、これを手にしたことから始まる冒険談。
自分のことを邪魔者扱いする嫁と息子が彼女を「光の家」という老人ホームに入れるところから物語は始まる。そこから彼女が逃げ出すという話なのかと思いきや、物語はどんどん思わぬ方向に進んでいき、殺人事件、魔女、そして天地創造とどんどん飛躍していく。のだが、めくるめくストーリーがどうやーどうやーと展開されるわけではなく、どちらかというと静かにさりげなくゆるゆると展開されるのである。全体的にはユーモラスな雰囲気が漂っていて、深刻さはない。

もやもや系というかそよ風系というか暖色系(←早速使わせていただいた)というか…。なんとも不思議な味わい。不思議な絵を前にしたような感じだなぁと思ったら、この作者は画家なのだなぁ。なるほどなるほど。表紙もそうだけど、挿絵もとても素敵だ。不思議で神秘的で不気味でユーモラスで。
ガツガツ読みたい私はまだこの小説を面白いと言えるほど成熟していないのかもしれない。普段使わない頭の部位を使ったような感じ…。ぼくちょっと疲れたよ、ママン…。