緋色の迷宮
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09
- メディア: 文庫
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うあーー。ひどいよ、クック…。
近所に住む8歳の少女が失踪し、自分の息子に嫌疑がかかる。まさか…と思っていたのが、徐々に「もしや」に変わり、妻との間にも溝ができてくる。さらには、自分が育ってきた家庭にも秘密があることに気づき…。
本の紹介を読んだときに、これはつらそうな小説だ…と思っていた。私がクックの作品で一番好きなのが「死の記憶」なのだが、それがベスト1だったけれどこの小説を読んでこちらがベスト1にかわった、と書いていた人がいたので、では読んでみるかと読んでみたのだが。
最初から胸をしめつけられるようなつらい展開。うわ…これはつらい…つらそうだ。どうしよう。あんまり感情移入しないようにして読もう。この息子を自分の子どもに置き換えたりしてよんじゃだめだ。絶対だめだ。この子はもう怪物みたいな子どもなのだと、そう思うようにしよう。
そんな風に言い聞かせながら読み進めるのだが、ああ…つらい…。なんか妙に身につまされるというか、決して他人事ではないのだという思いにもなってしまう。
そしてラストがもう…。ひどいよとしか言いようがないよ。うううう。もう当分クックは読みたくない…。
物語的にあまりに救いがなかったから、小説としては決して好きではないけれど、それでも単なるミステリーではなく残るものがあったとは思う。
なんといっても一番痛かったのは、信じることの難しさ。疑いだすともう止まらないのだ。「私はあなたを信じてるから」という言葉のなんと空虚なことか。そしてその疑いがどんどん自分を蝕んでいくのだ。そこがものすごくリアルでものすごく痛かった。読んだ小説を次々忘れていってしまう私だけど、この小説は忘れられそうにない。