高野聖
- 作者: 泉鏡花
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1992/12
- メディア: 文庫
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飛騨から信濃へ、峠道をたどる旅の僧が、山中の一軒家で一夜の宿を乞う。その家には美しい女と、その亭主が住んでいた。近くの流れに案内された僧は、女に体を洗われ、花びらに包まれたような気分になる。その夜、僧のまわりを無数の獣の気配がとりかこむが…。表題作『高野聖』など妖しく美しい幻想の世界を描いた5篇を収録。
次回の文芸漫談のお題の本なので読んだのだが面白かった…。 日本文学科出身のくせに日本文学が苦手なのだが、ここにおさめられている「外科室」は以前、小川洋子さん編の短編集で読んで面白い!と思っていた。
山中に迷い込んだ僧侶が人気のない村で1軒の家を訪ねる。家には美しい女と頭のおかしい男の子。馬小屋でもいいので泊めて欲しいと頼むと女はそれを受け入れ、疲れ果てた僧侶を川に連れて行く。このシーンの美しいこととエロティクなこと…。女の私でもドキドキしてしまう。
かいがいしく頭のおかしい男の子の世話をしながらも、こうして暮らしていると言葉さえも不自由になってしまうと囁く女の姿が目に焼き付いて、一旦村を離れて帰りかけた僧侶は、何もかも捨てて女のところへ戻ろうかと逡巡するのだが…。
分からない単語や言い回しはあっても、描かれる怪しさやドキドキするようなエロティズムは十分伝わってくる。
女と男の子の様子を見て思わず涙した僧侶の優しさと、誘惑されながらも危ないところで留まった信仰心のおかげで、どうにか助かったのだろうな…。
ほっとしながらもさみしげなところが生々しくていい。
いやぁ、面白かった。
日本人の想像力は決して南米にも劣らないとしみじみ思う。
あーこれを文芸漫談のお二人がどう料理するのか。めちゃくちゃ楽しみ!