遮断地区
- 作者: ミネット・ウォルターズ,成川裕子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/02/27
- メディア: 文庫
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バシンデール団地に越してきた老人と息子は、小児性愛者だと疑われていた。ふたりを排除しようとする抗議デモは、彼らが以前住んでいた街で十歳の少女が失踪したのをきっかけに、暴動へ発展する。団地は封鎖され、石と火焔瓶で武装した二千人の群衆が襲いかかる。医師のソフィーは、暴徒に襲撃された親子に監禁されて…。現代英国ミステリの女王が放つ、新境地にして最高傑作。
うわ、これほんとにウォルターズ?全然雰囲気違うんだけど。こういう作品も書けちゃうわけだ。すごい。
まるで映画を見ているような臨場感。
場面が目まぐるしく変わるので目を離せない。そしてそれぞれのシーンの中心になる登場人物の魅力的なことよ。ジミー!タイラー!好きだー!
確かにエイミーのストーリーが少し中途半端な気もするのだが、いままでのウォルターズだったら間違いなくエイミー側のストーリーをじっとりと描いたところをあえてそれはせずに、あくまでもこちらは抑えておいて、メインを暴動の方に置いたところが、新しいと思うし評価したい。
小児性愛というのはとても難しい問題だと思う。
子どもを持つ身としては、小児性愛者というのは身の毛もよだつ「敵」だ。そんな人間に近所に住んでほしくはないし、野放しにしてほしくないという思いは強い。
しかしだからといって、追われるように住む場所を変えていってもすぐに噂になり居られなくなったり標的にされてリンチを受けるようなことは…なんだか気の毒にも思えるのだ。
この作品の中でウォルターズは、小児性愛者側のことも描きながらも、一方その脅威も描くという、きちんと両面から丁寧に描いているのが素晴らしい。
やっぱりウォルターズはすごい。一生ついていきます!という思いを強くした。