あなたが最後に父親と会ったのは?
あなたが最後に父親と会ったのは? (新潮クレスト・ブックス)
- 作者: ブレイクモリソン
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1999/09
- メディア: 単行本
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末期癌になった父の人生と病気と死を綴ったノンフィクション。
中野恵津子翻訳に惹かれて読んだのだが、期待を裏切らない素晴らしい作品だった。
田舎の開業医である父親は、ケチでズルで負けず嫌い。「医者」という立場を都合よく利用したり、常に息子より優位でいようとしたり、同時に二人の女性を愛することができると開き直って浮気をしたり‥。
でも憎めない。根が優しくて善良であるということが、読んでいて伝わってきて、「しょうがないなぁ、このおやじ」と笑いながら受け入れたい気持ちになってしまう。それは作者の視線そのものなのだと思う。
胸が痛くなるような出来事を描き出すことで、父の死を受け止めよう、記憶しよう、理解しようという作者の気持ちが伝わってくる。
親の死にどう向き合うかという普遍的な何かが伝わってくる。
「あなたが最後に父親と会ったのは?」
棺が焼かれた時?最後に息を吐き出した時?最後に私を私とわかった時?悪い知らせを聞く前?
これこそまさに父だという何もかも完全にそろっている父に最後に会ったのはいつだったか。
それを作者は探し続け、最後にはっきりと答えを出す。
書くことで父の死を理解しようとする姿勢。決してきれいなだけではない父の姿と自分の姿を暴くことで真にわかりあおうとする姿勢。それが私を泣かせるんだ‥。
文学と非文学ってなんだろう。自分の中で長いこと考え続けているテーマなのだが、もしかするとそれは「普遍性」なのかもしれない、と思う。
きわめて個人的な出来事や気持ちを綴っていても、それがたくさんのひとの共感や「ああ、そういうことなのかも」という理解をうむとき、それが「文学」といえるのかもしれない、と。