おらおらでひとりいぐも
★★★★★
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――青春小説の対極、玄冬小説の誕生!
*玄冬小説とは……歳をとるのも悪くない、と思えるような小説のこと。
新たな老いの境地を描いた感動作。第54回文藝賞受賞作。
主婦から小説家へーー63歳、史上最年長受賞。
好き好き!読みづらいかなとおもっていたけど全然そんなことなかった。
東北弁、声に出して読むとストンと意味がわかるのが不思議。この桃子さんの心の声(柔毛突起の言)がたまらなくいい。ユーモラスで温かくて慰められる。
最愛の夫が急死して子どもたちとは疎遠で一人暮らし。とてつもなく寂しいけど自由でもあって、寂しさと楽しさを感じながら暮らす桃子さんがリアルだ。
とっちらかる思考、衰える身体、時々襲い掛かる孤独感。しかしそれらを飼いならしながら桃子さんは生きて行く。
芥川賞受賞作品はモヤモヤな読後感の作品が多いけどこれは珍しく爽やかだったなぁ。
楽しかった。