りつこの読書と落語メモ

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春琴抄

 

春琴抄 (角川文庫)

春琴抄 (角川文庫)

 

 ★★★★★

九つの時に失明し、やがて琴曲の名手となった春琴。美しく、音楽に秀で、しかし高慢で我が侭な春琴に、世話係として丁稚奉公の佐助があてがわれた。どんなに折檻を受けても不気味なほど献身的に尽くす佐助は、やがて春琴と切っても切れない深い仲になっていく。そんなある日、春琴が顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。火傷を負った女を前にして佐助は―。異常なまでの献身によって表現される、愛の倒錯の物語。マゾヒズムを究極まで美麗に描いた著者の代表作。

句読点を省いた文章がとにかく美しく、この美しい文章を原文で味わうことができる幸せを感じた。

佐助の春琴への想いは至高の愛なのか無私なのかマゾヒズムなのか。私にはわからないけれど、佐助の人生には春琴さえいればよくて、春琴の近くにいて彼女を感じることが彼の人生そのものだったのだろう。

美しさに執着し続けた春琴が火傷を負わされ初めて心の平安を得たのは皮肉だが、春琴の素晴らしい琴の音に聞き入る佐助の姿が見えるよう。

谷崎の文章を読むことが自分にとってご褒美のようになっていることに驚く。この年になって谷崎潤一郎を好きになるとは思わなかった。読まず嫌いはもったいない。