りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

馬治丹精会

9/20(水)、内幸町ホールでおこなわれた馬治丹精会に行ってきた。

・はまぐり「魚根問」
・馬治「百川」
ロケット団 漫才
~仲入り~
・馬治「宗眠の滝」


馬治師匠「百川」
馬治師匠の「百川」は何回か聞いてるけど、百兵衛さんが馬治師匠にとてもよくはまってる。かわいいんだけど強気なところや意地っ張りなところもあったりして、とってもチャーミング。
でもこの日はなんかちょっとやりづらそうな感じがあって、言い間違いがあったりリズムに乗り切れない感じ。

もしかしてこのせいじゃ?と思ったのは、この日のお客さんですごく大きな声で笑ってすぐに大きな拍手をする人がいたんだけど、これがもうちょっと尋常じゃないぐらいの大きさで。もしかしてお酒が入っていたのかなぁ。ここでそんなに笑う?というぐらいの声で笑って手をバンバン叩くのでもうそれが気になって気になって。
まわりのお客さんはみんなそっちに気を取られて笑うどころじゃなく…。
私も耐え切れず仲入りの時に席を移動したんだけど。
悪気はなくてもああいうのはほんとに勘弁だなぁ…。


馬治師匠「宗眠の滝」
席を離れたせいもあるけど笑いどころの少なめの噺だったから、あの狂ったような笑い声が会場に響きわたらず、ほっとした。

「宗眠の滝」、生で聞くのは初めてかも。
宿屋の主人が客のもとを訪ね、もう何日もこちらにお泊りいただいているけれどどこにも出かけずお酒ばかり飲んでいらっしゃる、たまにはお出かけになったらいかがですか、と声をかける。
客は「ありがとう」と言いながらも、自分は花より団子で観光に行くより宿屋でうまいものを食べて酒を飲む方がいいのだ、と言う。
それに外に行くとお金がかかるだろう。自分は一文無しだし、と。
え?一文無し?ご冗談でしょ、と主人。あなたはなんのお仕事をされているのですかと主人が聞くと腰元彫りをしていると言う。では作品を見せて下さいと言って見せてもらった虎を見て主人が「なぜ死んだ虎を彫ったのですか」と聞く。
それを聞いて客が、実は自分は橫谷宗珉の弟子で宗三郎という者なのだが、その虎を彫ったところ宗珉から「死んだ虎を彫るような弟子はいらない」と言われ破門になってしまった。自分ではこの虎のどこがわるいのかわからない。途方に暮れて旅に出て専門家のところを訪ねたものの、この虎を見せても「上手に彫れている」としか言ってもらえない。

これを見て「死んでいる」と言ったのは師匠とあなただけ。どうかわたしを弟子にしてくれ、と頼む。
宿屋の主人は「自分は素人だけれど、そこまで言うならあなたの面倒をみましょう」と宿屋に置いて面倒を見る約束をする。

最初のうちはダメ出しばかりされていた宗三郎だったが、そのうち主人も「これはいい」と認めてくれるようなものを彫れるようになる。
たまたま宿屋に泊った留守居役木村又兵衛が間に入り、殿様から刀に滝を彫るようにとの注文を受けることができた。
しかし慢心した宗三郎は酒を飲みながら滝を彫り、殿様から突き返される。
それを見た宿屋の主人が宗三郎に本気で怒り、ようやく我に返った宗三郎は宿を飛び出し、21日断食をして滝に打たれる。
そうして戻ってきて滝を彫り始めた宗三郎。その姿に主人も「これなら絶対にお殿様のお気に召すだろう」と思い「これで突き返されたら私もあなたと一緒に死にます」と約束する。
しかし彫りあがった滝は、前に作ったものよりも出来の悪いものだった。はたして…。


宗三郎のダメな人ぶりが馬治師匠にぴったり合っていてとても魅力がある。人が好くて、ひたむきだけど、ちょっと甘いところもあって。
頼まれて損得抜きで宗三郎の面倒を見る宿屋の主人も、とても立派な人だけれど立派すぎず人間臭くてとてもいい。

こういう噺を全く気障な感じなくできてしまうのが馬治師匠の魅力だなぁ。よかった。