りつこの読書と落語メモ

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スウィングしなけりゃ意味がない

 

スウィングしなけりゃ意味がない

スウィングしなけりゃ意味がない

 

 ★★★★★

1939年ナチス政権下のドイツ、ハンブルク。軍需会社経営者である父を持つ15歳の少年エディは享楽的な毎日を送っていた。戦争に行く気はないし、兵役を逃れる手段もある。ブルジョワと呼ばれるエディと仲間たちが夢中なのは、“スウィング(ジャズ)”だ。敵性音楽だが、なじみのカフェに行けば、お望みの音に浸ることができる。ここでは歌い踊り、全身が痺れるような音と、天才的な即興に驚嘆することがすべて。ゲシュタポの手入れからの脱走もお手のものだ。だが、そんな永遠に思える日々にも戦争が不穏な影を色濃く落としはじめた…。一人の少年の目を通し、戦争の狂気と滑稽さ、人間の本質を容赦なく抉り出す。権力と暴力に蹂躙されながらも、“未来”を掴みとろうと闘う人々の姿を、全編にちりばめられたジャズのナンバーとともに描きあげる、魂を震わせる物語。  

ナチス政権下のハンブルグで、甘やかされたボンボンだったエディがジャズに魅了されて警察の目を盗んでパーティを楽しんだり海賊盤を作って売ったり…。
自由な音楽のスウィングと半分ユダヤ人の友人マックスと付き合ううちにエディはナチス政権への軽蔑や怒りを抱くようになっていく。

兵隊に行くよりは刑務所に入る方を選ぶエディは、ナチスの言っていることや国のしていることには軽蔑しか感じていない。かといって彼に政治的な主張があるのかといえばそんなものはなく、ただ自分たちが自分たちらしく生きていたいだけだ。気持ちのいいスウィングを聞けば自然と身体が動き出して気持ちが高揚することを、馬鹿げた主義主張で封じ込められたくないだけなのだ。
その「軽さ」がどんどん悲惨になっていく時代の中で輝いていて、今この時代にこの作品を読めてよかったなぁと思ったのだった。

政権の裏をかきながらしたたかに生きるエディたちも決して無傷ではいられず、地獄を目の当たりにすることになるのだが、ボロボロになり果てても、それでも生き延びることに希望を見出す彼らがとても眩しく素敵だった。

すばらしかった。