りつこの読書と落語メモ

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夏に凍える舟

 

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

エーランド島に美しい夏がやってきた。島でリゾートを経営する富裕なクロス一族の末っ子ヨーナスは、海辺で過ごす二年ぶりの夏に心躍らせていた。しかしあ る夜、ボートでひとり海にこぎだした彼の目の前に、幽霊船が現われる。やっとのことで陸に戻ったヨーナスは、元船長イェルロフのボートハウスの扉をたた く。少年から話を聞いたイェルロフは、不吉な予感を覚える…。一方その少し前、復讐を誓うある男が島に帰りついていた。記憶と思いを丹念に描き上げた、 エーランド島四部作をしめくくる傑作ミステリ!

★★★★

エーランド島四部作の最終章。
美しい島とイェルロフの魅力で陰惨な事件に微かな希望を抱かせてくれるのがこのシリーズの好きなところ。

今回は事件が進行していく現在のパートと「帰ってきた男」の壮絶な過去のパートとが交互に語られ、かなりヘヴィ。
義父にソヴィエトに連れて行かれ、語られた「甘い未来」とはあまりにも遠くかけ離れた過酷な労働、そして連行された後、今度は「加害者側」に回ってからの殺戮の日々…。
最初はテロリストにしか思えなかった「帰ってきた男」だが、その人生を知るといつの間にか彼の方に加担したい気持ちにもなってくるのだが…。

イェルロフがヨーナスに言った「全部大人が悪い」という言葉が、最初の場面でたたずんでいたアーロンのその後の人生にも通じていて、なんともやりきれない。
みな生き延びるために必死だったのだろうが、うーん…。

ミステリーの枠からはみ出した部分がとても好きだったこのシリーズ。作者の次の作品が楽しみだ。