りつこの読書と落語メモ

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幸せのグラス

幸せのグラス (lettres)

幸せのグラス (lettres)

★★★★★

『秋の四重奏』から日本でも愛読者を得たバーバラ・ピム。『幸せのグラス』は、おひとりさま小説『よくできた女』とともに前期喜劇の双璧をなす長編である。語り手をつとめるヒロインは、戦後ロンドンの高級住宅街で役人の妻として何不自由ない生活を送る、33歳の美しきウィルメット・フォーサイス。しかし実のところ彼女は人生に退屈している。そこに現れたのが謎めいた美男子ピアーズ。酒癖が悪く、危なっかしい彼に心惹かれるウィルメットは、自分の不倫願望には無自覚のまま「ピアーズ改良計画」の名分のもと彼に接近してゆく。どこまでも軽やかな筆致で彼女の関心や悩みを語りながら、ウィルメットが欠点だらけのうぬぼれたダメ女にもかかわらず、読者に彼女を憎ませない手法は、20世紀のジェイン・オースティンと呼ばれるピムの上手さ全開である。生誕百周年を過ぎた今日に至るまで人気は衰えず、研究者・批評家によるピム論も跡を絶たない。詩人フィリップ・ラーキンは『幸せのグラス』をピム作品のなかでもっとも巧緻な最高傑作とみなしている。

何不自由なく暮らす裕福で美しくて愚かなウィルメット。自惚れが強くてお洒落と楽しむことにしか興味がなくて、でも悪気がなくて単純で善良。
彼女の退屈な毎日に彩りを与えてくれるのが、彼女のまわりにいる男性陣。彼女に対する好意を隠そうともしない親友の夫、新しく来たハンサムな司祭、そして親友の兄で少し危険な香りのするハンサムなピアーズ。

おひとりさま小説の「よくできた女」に比べるとこちらはセレブで何不自由ない奥様が主人公で、しかも彼女の不倫願望が延々綴られる物語なのでイラっとする読者もいるだろうが、私は好きだ。大好きだ。
ピアーズの言動に一喜一憂して一人相撲をするウィルメットがとっても可愛い。
この時代に…しかも敬虔なクリスチャンなのに結構自由なのねーと驚いたり、でもなんて無邪気でかわいいんだろうと微笑ましかったり…。

見下していた回りの人たちの方が人生を充実させていたことを知った時、ショックを受けながらもそれを受け入れ祝福するウィルメットが素敵。
野暮天と思い込んでいた夫の告白に怒りながら、ちゃんと理解して赦すところに彼女の成長が見えてとても良かった。
ピム、面白い!!