元気で大きいアメリカの赤ちゃん
- 作者: ジュディバドニッツ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/02/07
- メディア: 単行本
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奇妙で不気味、美しいのにどこかユーモラス
〈黒バドニッツ〉がスパークする傑作短編集現実を縦横無尽に侵食する奔放な想像力、そして絢爛たる色彩世界にひびく黒い笑い。
現代アメリカのダークな肖像を痛烈に描出した傑作中編群からスラップスティックな面白さがたまらない短編の数々まで、12作品を収録。
面白い!岸本さんばかりが売れていて翻訳モノのファンとしては「ちぇーっ!(他にも頑張ってる素敵な翻訳家さんはたくさんいるのにぃ!)」という気持ちになったりもするのだが、こんなヘンテコな小説が読めるのは岸本さんのおかげ。ありがたや〜と手を合わせてしまう。
女性らしい視点から我々の一番痛いところを突いてくるので、ぐわっ!となったり、ひーとのけぞったり。
生理的に「まいった」と白旗をあげたくなるような作品が多いが、不快感よりも身につまされる感覚で、それが不快ではなく気持ちいい。
「わたしたちの来たところ」
不幸もタブーもものともしないようなハハの強さと、大事だからこそ失うことを恐れるハハの弱さ。
身につまされながら、不思議と清々しい。
「流す」
母、長女、次女。
お互いを思いやりながらも邪険にしあい、それでもやはりそこにあるのは「愛」以外のなにものでもないのだ。
検査を逃げまくる母も、かわりにうけてあげる娘も、両方わたしだ。
「ナディア」
「男ともだち」に対する女たちの身勝手でねばついた感情がリアル。
意地悪いわーでもわかるわー。
「顔」
この短編集の中で一番好き。
不気味でありえなさそうだけど全然ありえそう。(変な日本語)
怖いけど面白い。
「奇跡」
ぎゃーーー。と叫びたくなる。こわいこわいこわい。
「水のなか」
これも好き。
呪いのように染み付いている「差別」と「偏見」。
子どもはおとなのように上手に隠せないだけに、大人が驚くほど、残酷になれるのだ。
「切断」
ぎゃーーーー。
「来訪者」「母たちの島」は既読。