りつこの読書と落語メモ

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幾千の夜、昨日の月

★★★★★

友と語り明かした林間学校、初めて足を踏み入れた異国の日暮れ、終電後恋人にひと目逢おうと飛ばすタクシー、消灯後の母の病室…夜は私に思い出させる。自分が何も持っていなくてひとりぼっちであることを。

角田さんのエッセイはハズレがないなぁ。
夜というテーマで旅のことや想い出に残る夜を書いているのだが、ちょっと切なくてすごくおかしくて、笑ったりキュンとなったりしながら読んだ。
「夜のアトラス」に描かれたある出来事がツボで、電車の中で読んでいて声を出して笑ってしまい、そのあともずっと笑い顔がおさまらず困った…。

世界中を一人で何回も旅しているのにあれが怖いこれが怖い、虫が嫌だ、ベンツが私を付けてきたとわあわあ言ってる角田さん。
旅先で酒に酔うと怖いと思っているのに飲むととたんに怖いものがなくなってしまう角田さん。
逆玉狙いで濃いハンサムを押し付けられる角田さん。

自分が体験したことじゃないのに自分が体験したことのようにリアルに感じられる不思議。
角田さんの文章は、角田さんの体験を「私たちのこと」にしてくれると西加奈子さんが解説に書いていたけど言い得て妙。
文章がいいんだよなぁ。飾らない文章だけど、なぜかぐっとくる。ああ、そうだなぁ、って思える。

そうそう、西さんの解説がまた涙が出るほどいいんだ。
「おばあちゃんのような小さな女の子のような勇敢な女性。」
これ以上の褒め言葉があるだろうか。