りつこの読書と落語メモ

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善き女の愛

善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)

善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)

★★★★

昨年度ノーベル文学賞に輝いたマンローの円熟期の傑作短篇集。独身の善良な訪問看護婦が元同級生に寄せる淡い思いと、死にゆくその妻。三者の心理的駆け引きをスリリングに描くO・ヘンリー賞受賞の表題作ほか、母と娘、夫と妻、嫁と小姑など、誰にも覚えのある家族間の出来事を見事なドラマとして描きだす、マンローの筆が冴える金字塔的短篇集。一九九八年度全米批評家協会賞受賞作。

誰の心にも疑いや苛立ちはあって、追い詰められたり悪意をぶつけられたり恋愛の激情にのみこまれたときに、今まで上手に隠していたはずのそれらが明るみになる。

自分でも信じられないような、眉をひそめられるような非常識な行動をとったことのない人なんていないだろうが、一時の気の迷いとして蓋をするのか、そちらを正として突き進むのか。
心の中で起こっていることは同じでもその後の行動で大きな違いが出る。しかし一皮剥けば誰もが同じような嵐を心の中に隠しているのだ。

マンローの小説は美しいだけではない人間の姿を描き出している。
生きていくことは恐ろしいけれど失うだけではなく何かを手にすることもできる。
苦い物語ばかりだが、暗い中にあるほのかな光を見せてくれるところが好きだ。