りつこの読書と落語メモ

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なついた羚羊

なついた羚羊 (20世紀英国モダニズム小説集成)

なついた羚羊 (20世紀英国モダニズム小説集成)

★★★★

ユーモアと風刺をこめて描く珠玉の喜劇。イギリスのある穏やかな村に暮らすビード姉妹。ともに50代で独身。姉ベリンダはしっかりものながら内気で、地元大執事の妻帯者ヘンリーに30年来の恋心を抱く。妹ハリエットは歴代の若手副牧師の世話を焼き、異性との微妙な関係を楽しんでいた。そこへ新任の副牧師が赴任してきて…。第一次世界大戦後の英国中流生活の雰囲気を伝える傑作小説!20世紀のジェイン・オースティンと謳われる女性作家長篇デビュー作!本邦初訳!

「よくできた女」が大好きだったピム。まさかこのタイミングでデビュー作が翻訳されるとは。

信心深くて控え目(過ぎ)で堅苦しい主人公のベリンダだが、地味な自分を時に悲しく思いながらも日々の小さな出来事に心を痛めたり慰めを見いだしたりしながら、生き生きと生きている。
教会に通うことが生活の中で大きな比重を占めていたり、女はこうでなければならないという価値観が根強かったり、食事や着るものや生活そのものが非常につましかったり、引用される文も正直ピンとこないものが多かったりするのだが、それでも不思議と退屈しない。

また、保守的で面白みが欠けているように思えるベリンダだが、愛のない結婚をして安定した暮らしを送るよりは、自分の胸に秘めた恋心を表には出さず大切にしながら、つましく楽しく好きなことをして暮らしたい、という揺るぎない気持ちを持っていたり、まわりの人たちに対する視線が案外辛辣な面もあったりして、そこが結構面白い。

奔放な妹に、自分が外出用に長年着ていたドレスをけなされる場面。

リエットが容赦なく行った。「それにわたし、この服は前から緑色が見るに堪えないって思ってたのよ。姉さんが黄色く見えるもの」 ベリンダは生地をこねる手を止め、今まで何度このドレスを着たかしらと思った。そのたびに自分は黄色く見えたのだろうか。心穏やかでない。

淡々と書かれているけどなんだかおかしくて思わず吹き出してしまった。
「よくできた女」よりもっと地味で一般受けはしないだろうが、生真面目な中に漂うユーモアと辛辣さが大好きだ。ほかの作品も翻訳されますように…!