りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

問いのない答え

問いのない答え

問いのない答え

★★★★★

震災発生の三日後、小説家のネムオはネット上で「それはなんでしょう」という言葉遊びを始めた。一部だけ明らかにされた質問文に、出題の全容がわからぬまま無理やり回答する遊びだ。設定した時刻になり出題者が問題の全文を明らかにしたとき、参加者は寄せられた「問いのない答え」をさかのぼり、解釈や鑑賞を書き連ねる。そして画面上には“にぎやかななにか”が立ち上がる―ことばと不条理な現実の本質に迫る、静かな意欲作。それぞれの場所で同じ時間を過ごす切実な生を描いた、著者四年振りの長篇群像劇。

東日本大震災。あの地震の時に感じた足元がぐらつく感覚、不安感、違和感、罪悪感と、ネットの繋がりで得られる人との結び付きをとてもリアルに脚色することなく誠実に描いている。

日本は小さい国だけど、いる場所によってこんなにも被害の大きさが違うこと、家や家族を失って不自由な生活を強いられている人たちが大勢いる一方で、東京に暮らしながら買いだめに走る人がいてスーパーが空っぽになったりしたこと。そしてその後の原発事故のこと…。
自分で消化できないような気持ちを抱きながらも、家族で話をしたり仕事や家事などの日常生活に紛れて、見たくないものを見ないようにしていたこと。
ブログやtwitterを見て「ああ、同じだ」と共感してほっとしたり、「なんかだめだ」と目を背けたり。
分からないのだ、何が正解なのかが。そもそも正解を求めること自体が間違っているように思うし、かといってそれをこれからじっくり考えていかねばなるまい等と言うのもずるいように思う。

そんな日頃感じるもやもやがきちんと文章で表現されていて、凄いなぁ…と思う。
傑作なのか軽薄なのか私には判断できないけれど、私は激しく共感したし励まされた。よかった。