りつこの読書と落語メモ

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11/22/63

11/22/63 上

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11/22/63 下

11/22/63 下

★★★★★

小さな町の食堂、その倉庫の奥の「穴」。その先にあるのは50年以上も過去の世界、1958年9月19日。このタイムトンネルをつかえば、1963年11月22日に起きた「あの悲劇」を止められるかもしれない…ケネディ暗殺を阻止するためぼくは過去への旅に出る。世界最高のストーリーテラーが新たに放った最高傑作。

面白かった!いままで読んだキング作品のなかで一番好きかも。
ケネディ暗殺を阻止するために主人公ジェイクは食堂の倉庫の奥の「穴」を通って過去の世界へ行く。この「穴」は1958年9月9日のアメリカへ繋がっている。
ふとしたことからこの過去への扉を見つけた食堂の店主アルはケネディ暗殺を阻止しようと試みていたのだが、ガンに冒されてしまい瀕死の状態になり、その使命をジェイクに託す。
過去を変えようとするジェイクとそれを阻止しようとする未知なる力。
果たしてジェイクは暗殺を阻止することができるのか。

主軸の物語のあらすじを語れば数分で終わってしまう。
しかしこの物語が素晴らしいのは主軸のストーリーではなく、細部にある。
希望と夢に満ちておおらかな優しさのあふれるアメリカがそこにはある。しかしそれはただの古き良き時代ではない。人種差別、女性蔑視が横行し、人間関係が濃密なだけに互いを監視し合う「村社会」でもある。
そんなアメリカの明暗をキングは生き生きと描き出す。

ほんの時間つぶしのつもりで高校の非常勤講師になったジェイクはそこで生徒たちと心を通わせ友情を築き愛する女性とめぐり合う。
ケネディの命を救うことが彼らとの関係より本当に大切なことなのか。自分がこうして過去に来たことで彼らの運命を悪い方に変えてしまっているのではないか。
そんな疑問を抱きながらも日々は無情に過ぎて行き、そして過去を変えることを阻止する力によってジェイクは生命の危機にさらされる…。

過去の世界でジェイクが愛する人を見つけ生きがいを見つけ生き生きと生きるほどに、なぜ彼は現実の世界でこんなふうに生きることができなかったのだろうか、という疑問が沸き上がってくる。
そして自分の愛するたった一人の人を幸せにすることができない人間に国を救うことなどできるのだろうか。またケネディの暗殺がなければもっと良い未来が本当に待っているのだろうか、とも。

細部が丁寧に描かれているから、読み終わった時に疾走感以上のものが残る。
辛いストーリーなのにあたたかい。いまも私のそばにジェイクがいるような気がする。
小説を読むよろこびがぎゅっと詰まっている一冊。素晴らしい。