りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ウエストウイング

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★★★★

職場の雑事に追われる事務職のOL・ネゴロ、単調な毎日を送る平凡な20代サラリーマン・フカボリ、進学塾に通う母子家庭の小学生・ヒロシ。職場、将来、成績と、それぞれに思いわずらう三人が、取り壊しの噂もある椿ビルディング西棟の物置き場で、互いの顔も知らぬまま物々交換を始める。ビルの隙間で一息つく日々のなか、隠し部屋の三人には、次から次へと不思議な災難が降りかかる。そして彼らは、図らずも西棟最大の危機に立ち向かうことに…。

さすがサラリーマン作家の津村さんは職場の停滞した空気を描かせたらぴか一だ。取り立てて騒ぐほどではない悪意に消耗し、気を使っても空回りして自分の首を絞めるだけで、なんでこんなに疲れているのかわからないけれどものすごく疲れて不機嫌になっている。
しかし辛いのは自分だけじゃない。

淡々と仕事をこなす事務職のOL・ネゴロ、のほほんとしているように見える20代のサラリーマン・フカボリ、進学塾に通う母子家庭のヒロシ。みなそれぞれに悩みを抱え日々を過ごしている。
取り壊しのうわさもある椿ビルディングの物置き場で息抜きをする3人が、お互いの顔も知らないまま、この場所で物々交換を始める。

なにかすごくいいことが起きるわけでも救いが見つかるわけでもないのに読み終わるとなぜか少しだけ元気になって笑っているのが不思議。
真に理解しあえたり運命的な出逢いではなくても、ちょっとしたやりとりや触れ合いで案外なにかを変えることができるのだな。

とるに足りないような日常にも意味がないわけではないと思わせてくれる。この物語が好きだ。